化物丁場(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
崩れる線路の怪
- 怪奇
- 文字数
- 5,323字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 岩手県
この作品について
宮沢賢治の短編。大雨のあとの軽便鉄道の車内で、語り手が線路工夫から、雫石と橋場の間の難所「化物丁場」の話を聞き出す。盛った砂利が理由もなく何度も崩れる工事を、工夫が淡々と、ときに笑いをまじえて語る。鉄道工事の現場の空気と、原因のわからなさへの人々のあきらめが、会話を通して伝わる。
あらすじ
五、六日続いた雨のあがった朝、語り手は黒沢尻から仙人鉱山へ向かう軽便鉄道に乗る。車内では洪水の噂が飛びかうなか、後ろの席の線路工夫が「雫石と橋場の間がめちゃめちゃだ」とつぶやき、語り手はあの化物丁場かと尋ねる。工夫は冬の工事の思い出を語りはじめる。盛った砂利が、雨も降らないのに崩れ、八日がかりで積み直した晩、夜中にまた崩れたと知らされて駆けつけると、アセチレンの光の中で石がころころ転がっていた。その後も積み直しては崩れることが繰り返され、乱杭を打ち、夜通し焚き火で番をしても原因はつかめない。県の人も鉄道院の検査官も首をかしげ、岩の層の釣り合いのせいだという説も、誰も本気にしない。話の途中で汽車は藤根に着き、工夫は挨拶して降り、線路を歩いて戻っていく。空の嵐は大したこともなく晴れそうに見える。
登場人物
- 語り手 仙人鉱山へ向かう用事のある乗客
- 線路工夫 化物丁場の工事で働いた人。話し好き
冒頭部(原文より)
五六日続いた雨の、やっとあがった朝でした。黄金の日光が、青い木や稲を、照してはゐましたが、空には、方角の決まらない雲がふらふら飛び、山脈も非常に近く見えて、なんだかまだほんたうに霽れたといふやうな気がしませんでした。 私は、西の仙人鉱山に、小さな用事がありましたので、黒沢尻で、軽便鉄道に乗りかへました。 車室の中は、割合空いて居りました。それでもやっぱり二十人ぐらゐはあったでせう。がやがや話して居りました。私のあとから入って来た人もありました。
「化物丁場」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「さよなら。」私は見送りました。その人は道具を肩にかけ改札の方へ行かず、すぐに線路を来た方に戻りました。その線路は、青い稲の田の中に白く光ってゐました。そらでは風も静まったらしく、大したあらしにもならないでそのまゝ霽れるやうに見えたのです。
「化物丁場」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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