右門捕物帖 お蘭しごきの秘密(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
江戸紫のしごきばかりを盗む男
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 23,330字
- 読了目安
- 約47分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第二十八話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。三月、伝六がこっそりつけている「ふところ日記」には、若い女の腰から帯がわりのしごきばかりを盗む怪しい男のことが書きとめられていた。盗まれたのはどれも江戸紫の幅広の袋ひも。伝六のもとには、出すぎた告げ口をするなという脅し文まで投げこまれる。上野の花見の雨のなか、恋の仕掛けと悪だくみがからみ合う一編。
あらすじ
三月、不忍弁天裏、両国河岸、牛込門わきと、若い女の腰から江戸紫の幅広のしごきだけを盗む事件が続く。伝六のふところ日記を聞いた右門は、それが流行の「お蘭しごき」だと見抜く。その夜、伝六の家に、出すぎた告げ口をすれば命はないという左封の脅し文が投げこまれる。右門は染め元である加賀家御用の染め物師紅屋徳兵衛を訪ね、お蘭しごきが十一日に三十六本染め上がり、十一本が店で売れ、残る二十五本は加賀家の奥へ納められたこと、加賀家の腰元が月に決まって三本ずつ買っていくことを聞き出す。翌日、加賀家の腰元衆の上野の花見に右門と伝六が出向くと、にわか雨の騒ぎのなかでしごき泥棒が捕らえられた。右門はその男を、指に染めの色が残る紅屋の手代と見抜く。手代の幸助は、加賀家の奥に仕える幼なじみのお蘭と恋仲で、二重の袋仕立てのしごきに文を忍ばせて届けていた。ところが文を入れた一本が誤って町の客に売られてしまい、取り戻そうとしごきを盗んで回っていたのである。花見の場にお蘭の姿はなく、浅草並木町の家へ宿下がりしていた。右門が訪ねると、お蘭は泣き伏していた。もと加賀家の二天流指南役で、藩士を殺した疑いで浪人した黒岩清九郎が、門人の姪が買ったしごきから文を手に入れ、密通の証拠をたてにお蘭をゆすっていたのだった。右門はお蘭を当て身で気絶させて帰ったと見せかけ、お蘭を連れ出そうとした清九郎ら四人を草香流で倒す。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。しごき泥棒の目当てを読み解く
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。ふところ日記をつけ、脅し文を投げこまれる
- 紅屋徳兵衛 加賀家御用の染め物師。お蘭しごきの染め元
- お蘭 加賀家の奥に仕える腰元
- 幸助 紅屋の手代
冒頭部(原文より)
1 ――その第二十八番てがらです。 「一ツ、三月十二日。チクショウメ、ふざけたまねをしやがる。女ノ女郎めが、不忍弁天サマ裏ニテ、お参リノ途中、腰ニ結ンデおったる、シゴキを盗み取られたとなり。くやしいが、ベッピンなり。昼間のことなれば、やいの、やいのと、呼ンダレド、呼ンダレド、だれも助けに来ねえとなり。いと怪し」
「右門捕物帖 お蘭しごきの秘密」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「痛いめに会わせましたね、一石二鳥の右門流といやちっと口はばったいが、一つにゃやつらをおびき寄せるため、二つにゃおまえさんにおけがのねえようにと、涼んでいてもらったんですよ。そのかわりに、このとおり幸助どんの心をこめた玉章がおみやげだ。二度の奥勤めもできますまいから、しかるべき法を講じてね、早く長火ばちの向こうにおすわりなせえよ。――伝あにい、用を足してきたかい。人さまが手生けの花見でもけりがついたかな。花がこんなところでも散ってくらあ。かえるかね――」 と、こともなげに立ち去りました。
「右門捕物帖 お蘭しごきの秘密」佐々木味津三(青空文庫)
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