もののあはれとは
- 分類
- その他
- 読み
- もののあはれ
平安王朝の文学、とりわけ『源氏物語』を貫く根本的な美的理念。事物や自然、人の世のさまざまなことにふれて、心の奥にしみじみと湧きあがる感動や情趣をいう。この語に文学理念としての深い意味を与えたのは、江戸中期の国学者・本居宣長である。宣長は宝暦13年(1763年)の『紫文要領』で初めてこの説をまとまった形で述べ、のちの『源氏物語玉の小櫛』(寛政8年・1796年成稿)でさらに深めて、源氏物語の本質は儒教や仏教の教訓にあるのではなく、「もののあはれを知る」ことにこそあると説き、勧善懲悪の道徳で文学を評価する立場を退けて、物語を道徳や実用から独立した美の営みとしてとらえ直した。同じころの『石上私淑言』では和歌についても、歌は「もののあはれ」を知る心から生まれると説いている。喜びであれ悲しみであれ、物事の趣を深く感じ取る心の動きこそを文学の価値とするこの見方は、優美繊細な王朝の和歌や日記にも通じ、日本人の美意識の根幹をなす理念として、後世の文学観に決定的な影響を与えた。
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