をかしとは

分類
その他
読み
をかし

平安時代の文学を貫く美的理念の一つで、対象を少し離れたところから眺め、明るく知的に面白がる感覚をいう。「趣がある」「風情がある」「気が利いている」といった幅を持ち、現代語の「おかしい」よりはるかに広い。清少納言の『枕草子』はこの語をくり返し用い、四季の移ろい、宮廷の出来事、身のまわりの些細な物事までを、鋭い観察と機知によって切り取ってみせた。「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて」と書き起こす冒頭は、その感覚を端的に示している。文学史では、しみじみと心にしみる情趣をいう「もののあはれ」と対にして説明されることが多く、『源氏物語』を「もののあはれ」の文学、『枕草子』を「をかし」の文学と呼びならわす。悲しみに寄り添う「あはれ」に対して、「をかし」は対象と距離を取り、世界を明るく肯定してみせる態度である。この批評的で軽やかなまなざしは、中世の随筆や近世の俳諧の笑いにも流れこんでおり、日本文学のもう一つの底流をなしている。

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