転向文学とは

分類
形式・ジャンル
読み
てんこうぶんがく

昭和8年(1933年)以降、弾圧によって共産主義の信条を捨てた作家たちが、その転向の体験を主題として書いた作品群。この年、獄中にあった日本共産党幹部の佐野学と鍋山貞親が「共同被告同志に告ぐる書」を発表して運動の方針を否定したことが引き金となり、検挙された文学者の多くも相次いで転向を表明した。村山知義『白夜』、島木健作『癩』、高見順『故旧忘れ得べき』などがこれにあたり、中野重治が『村の家』(昭和10年)で、筆を折れと迫る父の前に沈黙する主人公を描いたのは代表的な達成である。屈服の後ろめたさ、思想と生活の落差、家族との関係を凝視するその筆致は、結果として作者自身を掘り下げる私小説の伝統に接近していった。もっとも、弾圧の実態をそのまま書くことは検閲下で許されず、作品はしばしば屈折した表現を強いられている。組織としてのプロレタリア文学が壊滅したあとの空白を埋めるように広がり、同じころ台頭した日本浪曼派とともに、戦時下へ向かう昭和10年代の文学の一面をかたちづくっている。

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