有心とは

分類
その他
読み
うしん

中世の歌論で重んじられた美的理念で、深い心をこめて対象をとらえ、その心と詞とが一つに溶け合った歌の境地をいう。平安時代の日常語では「無心」と対になり、思慮や風流心のあることを意味したが、歌合の判詞で歌を「心あり」と評する伝統や、藤原俊成の幽玄の理念を受けて、その子・藤原定家のもとで歌論の中心的な概念となった。定家の著とされる歌論書『毎月抄』(承久元年=1219年の奥書をもつ)は、幽玄様・長高様・有心様など和歌の十の体(十体)を挙げたうえで、有心体をそのいずれにも通じる最も大切な体と説き、「いづれの体にてもただ有心の体を存ずべき」と述べている。ここでいう有心は、題の本意を深く見きわめ、心を澄ませて歌によみ入る作者の姿勢を指し、そこから生まれる妖艶な余情の美と結びつけて理解された。『新古今和歌集』の歌風を語るときにも、幽玄と並んでこの語が用いられる。連歌では、和歌的な優雅さをもつ有心連歌が、滑稽を主とする無心連歌に対して正統とされ、心敬らの連歌論にも有心の考え方が受け継がれた。

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