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ああ玉杯に花うけて(佐藤紅緑)のあらすじ・登場人物

ぼくらはおたがいに英雄じゃないか

  • 青春

佐藤紅緑 1927年(昭和2年)5月 「少年倶楽部」

文字数
126,617字
読了目安
約4時間13分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 埼玉県

この作品について

1927年(昭和2年)から翌年にかけて「少年倶楽部」に連載され、爆発的な人気を呼んだ佐藤紅緑の少年小説。題は旧制第一高等学校の寮歌「嗚呼玉杯に花うけて」にちなむ。浦和の町で豆腐を売って暮らす十五歳の青木千三は、金も親もない身で侮辱に耐えながら、学問への渇きを胸に秘めている。中学生の柳光一、隠者めいた黙々先生、乱暴者の阪井巌らとの出会いを通じて、少年たちが「真の英雄」とは何かを学んでゆく。この連載で「少年倶楽部」の部数は三十万から四十五万へ跳ね上がったという。

あらすじ

春の朝、豆腐屋のチビ公こと青木千三は、てんびん棒をかついで町へ急ぐ。二歳で父を亡くし、母とともに伯父の世話になって育った。伯父の話では、いま医者が住んでいる大きな家は、かつて父が財を投じて建てたものだという。「この家をとりかえしてお母さんを入れてやりたい」——ねぎ畑に立つたび、千三はそう思う。だが十五になっても背は伸びず、町へ出れば役場の助役の子で柔道に凝る阪井巌に捕まって、耳をつかんで持ち上げられ、焼き豆腐の皮だけ食われて銭は次と言われる。金があるから中学へ行ける、親があるから中学へ行ける、自分は生涯豆腐をかついでらっぱを吹くのか——涙をこぼしながららっぱを吹く千三の胸は憤怒に燃えた。やがて彼は、中学生の柳光一と出会う。境遇も気性も違う少年たちは、反目し、殴り合い、そして互いを認め合ってゆく。「ぼくは今夜きみの演説で真の英雄がわかった」——玉杯の歌を高らかに歌う夜へと物語は進む。

登場人物

冒頭部(原文より)

         一  豆腐屋のチビ公はいまたんぼのあぜを伝ってつぎの町へ急ぎつつある。さわやかな春の朝日が森をはなれて黄金の光の雨を緑の麦畑に、黄色な菜畑に、げんげさくくれないの田に降らす、あぜの草は夜露からめざめて軽やかに頭を上げる、すみれは薄紫の扉を開き、たんぽぽはオレンジ色の冠をささげる。

「ああ玉杯に花うけて」佐藤紅緑(青空文庫)

末尾部(原文より)

 読者諸君、回数にかぎりあり、この物語はこれにて擱筆します。もし諸君が人々の消息を知りたければ六年前に一高の寮舎にありし人について聞くがよい。青木千三と柳光一はどの室の窓からその元気のいい顔をだしてどんな声で玉杯をうたったか。それから一年おくれて入校した生蕃とあだなのつく阪井巌という青年が非常な勉強をもって首席で大学にはいったことも同時に聞くがいい。

「ああ玉杯に花うけて」佐藤紅緑(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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