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小公女(バーネット)のあらすじ・登場人物

心の中では、いつでも王女さま

  • 心理
  • 青春
  • 翻訳

バーネット 訳者 菊池寛 1927年(昭和2年)12月

文字数
117,354字
読了目安
約3時間55分
表記
新字新仮名

この作品について

「小公子」の姉妹篇として書かれたバーネットの物語(1905年)を、菊池寛が「小学生全集」のために訳したもの。インドで財を成した父に伴われてロンドンの寄宿学校に入った少女セエラが、父の死と破産によって一夜にして無一物の孤児となり、屋根裏部屋の下働きとして扱われながらも誇りを失わない姿を描く。「どんな境遇にいても正しさを枉げない」少年少女の姿を、栄達と没落の両面から描いてみせたのだと、菊池寛は巻頭の「はしがき」に記している。

あらすじ

霧の深い冬のロンドン。インドで鉱山事業に成功したクルウ大尉が、七歳の娘セエラをミンチン女史の寄宿学校に預ける。金に糸目をつけない父のはからいでセエラは特別待遇を受け、専用の居間と小間使いを与えられ、フランス語を自在に話す利発さで一目置かれた。もっとも本人は威張るということを知らず、召使のベッキイや、のろまと笑われるアーメンガードや、幼いロッテをやさしくかばう。ところが十一歳の誕生日の席へ、父の死と、ダイヤモンド鉱山への投資による全財産の喪失を告げる知らせが届く。手のひらを返したミンチン女史は、セエラを屋根裏に移し、使い走りと下働きに追い立てる。寒さと空腹の日々のなかでも、セエラは自分に言いきかせる——本当の王女さまなら、どんなときでも王女さまらしくふるまうはずだ、と。ある雪の日、拾った銀貨でパンを買い、その大半を自分よりひもじい少女に与える。やがて隣家に越してきたインド帰りの紳士とその召使ラム・ダスによって、屋根裏に不思議な贈り物が届くようになり、その紳士こそ、父の親友で鉱山の共同事業者であった人だと明らかになる。

登場人物

冒頭部(原文より)

一 印度からロンドンへ  ある陰気な冬の日のことでした。ロンドンの市中は、非常な霧のために、街筋には街燈が点り、商店の飾窓は瓦斯の光に輝いて、まるで夜が来たかと思われるようでした。その中を、風変りなどこか変った様子の少女が、父親と一緒に辻馬車に乗って、さして急ぐともなく、揺られて行きました。父の腕に抱かれた少女は、脚を縮めて坐り、窓越しに往来の人々を眺めていました。  セエラ・クルウはまだやっと七歳なのに、十二にしてもませすぎた眼付をしていました。彼女は年中大人の世界のことを空想してばかりいましたので、自然顔付もませてきたのでしょう。彼女自身も、もう永い永い生涯を生きて来たような気持でいました。

「小公女」バーネット(青空文庫)

末尾部(原文より)

アンヌはその手を握りました。二人はまたお互に眼を見合せました。 「私、うれしくてよ。」と、セエラはいいました。「私、今しがた、いいことを考えていたの。きっとおかみさんは、あなたにパンを施させて下さるでしょう。あなたもきっと、その役をよろこんでして下さると思うわ。あなただって、ひもじい味はよく知ってらっしゃるのですものね。」 「はい、お嬢さん。」と、少女は答えました。  アンヌは、それぎり何もいわず、つっ立っていたばかりでしたが、セエラには、アンヌの気持がよく解るような気がしました。アンヌは、いつまでもそこに立って、セエラが印度紳士と一緒に店を出、馬車に乗って去って行くのを、じっと見送っていました。

「小公女」バーネット(青空文庫)

名文

「セエラは、そのつもりになるためには、顔とか持物とかは、どんなでもかまわないっていうのよ。何を考え、何をするかということが、かんじんなんですって。」

セエラが「自分はプリンセスだ」と想像して振る舞う様子を、同級生が語る一節。境遇ではなく何を考え何をするかが大切だという、物語の核を示す。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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