アプリで読む

無料・登録不要

彼 第二(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

異邦の友と歩いた雪の夜

  • 青春
  • 心理

芥川龍之介 1927年(昭和2年)1月 「新潮」

文字数
5,492字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

芥川龍之介の晩年の短編。「彼」と題する作品の続編で、こちらの「彼」は若い愛蘭土人の友人である。初対面の既視感、雪の夜のカッフェ、日本での暮らし、上海での再会と、「僕」の記憶を五つの章に区切って綴る。日本文学への愛読と日本への幻滅が入り混じった異邦人の姿が、友人の目から描かれる。「新潮」1927(昭和2)年1月号に発表。

あらすじ

「僕」は若い愛蘭土人の友人と初めて会ったとき、前にも会ったことがあるような不思議な既視感を覚えた。二十五歳の冬、カッフェ・パウリスタで、蓄音機の音楽に腹を立てた彼は、クルウェットスタンドを投げようとし、二人は粉雪の中を歩いて語り合う。彼は従軍を願って本国に電報を打つが叶わず、その後は日本で英字新聞の記者を務める。柳橋の芸者に贈る指環を見せ、谷崎潤一郎を読み、日本への愛着と幻滅を口にする。最後に会ったのは上海のカッフェで、彼はソヴィエット治下のロシアに住みたいと語り、万葉集の歌を日本語で口ずさんだ。彼はそれから半年ほどのちに天然痘で亡くなる。ニースにいる彼の妹から手紙が届いた日の夜、「僕」は夢の中で、初対面のころの彼とカミンの火を囲み、ふたたび彼の言葉を聞く。

冒頭部(原文より)

 彼は若い愛蘭土人だった。彼の名前などは言わずとも好い。僕はただ彼の友だちだった。彼の妹さんは僕のことを未だに My brother's best friend と書いたりしている。僕は彼と初対面の時、何か前にも彼の顔を見たことのあるような心もちがした。いや、彼の顔ばかりではない。その部屋のカミンに燃えている火も、火かげの映った桃花心木の椅子も、カミンの上のプラトオン全集も確かに見たことのあるような気がした。この気もちはまた彼と話しているうちにだんだん強まって来るばかりだった。僕はいつかこう云う光景は五六年前の夢の中にも見たことがあったと思うようになった。しかし勿論そんなことは一度も口に出したことはなかった。彼は敷島をふかしながら、当然僕等の間に起る愛蘭土の作家たちの話をしていた。

「彼 第二」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

 しかし僕は腰かけたまま、いつかうとうと眠ってしまった。すると、――おのずから目を醒ました。夜はまだ明け切らずにいるのであろう。風呂敷に包んだ電燈は薄暗い光を落している。僕は床の上に腹這いになり、妙な興奮を鎮めるために「敷島」に一本火をつけて見た。が、夢の中に眠った僕が現在に目を醒ましているのはどうも無気味でならなかった。

「彼 第二」芥川龍之介(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品