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地上 地に潜むもの(島田清次郎)のあらすじ・登場人物

万人の悲しい涙のために戦おう

  • 青春
  • 心理

島田清次郎 1919年(大正8年)6月 「書き下ろし」

文字数
175,005字
読了目安
約5時間50分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

1919年(大正8年)、二十歳の島田清次郎が発表して大正期屈指のベストセラーとなった長編の第一部。妾である母と暮らす中学生・大河平一郎が、貧しさと出生の負い目に苛まれながら、恋と友情と反抗のなかで自我を燃え上がらせてゆく。「虐げらるゝ者の涙流る、之を慰むる者あらざるなり」という伝道之書の一句を掲げて始まり、やがて「万人の涙のために戦おう」という叫びに至る。作者は一夜にして時代の寵児となり、そして急速に転落した。その激しさと稚さを、そのまま封じ込めたような作品である。

あらすじ

大河平一郎が学校から帰ると、母のお光は「冬子ねえさんのところへ行きます」という置手紙を残して留守だった。十五歳、級長をつとめる彼は、その日の帰りがけ、校門で柔道初段の長田が美少年の深井に絡んでいるのを見かね、後ろから殴りつけて助けてやった。だが深井を家まで送り届けたとき、その隣家が、平一郎の思いを寄せる和歌子の家であることを知って血が上気する。今しがた美少年のために戦った任侠の徒が、たちまち恋敵を迎えることになったのだ。母は妾であり、家は貧しい。よい家庭に育った少年たちとのあいだに横たわる距離が、そのまま彼の胸の底に灼けつく。恋と嫉妬、貧困と屈辱、才への自負と孤独——少年の感情は激しく揺れながら、やがて東京の富める家に身を寄せる日を迎える。そこで浴びせられる侮蔑の言葉に耐えかねた彼は、屋上から降りて部屋に閉じこもり、熱い涙とともに誓う。自分の涙は万人の涙だ、その涙のために戦おう、と。

登場人物

冒頭部(原文より)

虐げらるゝ者の涙流る 之を慰むる者あらざる なり  ――傳道之書 第一章  大河平一郎が学校から遅く帰って来ると母のお光は留守でいなかった。二階の上り口の四畳の室の長火鉢の上にはいつも不在の時するように彼宛ての短い置手紙がしてあった。

「地上 地に潜むもの」島田清次郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ああ、自分はどうしよう」(獣には穴あり空とぶ鳥は巣あり、されど人の子は枕するに所なし)――熱い涙が制し切れなかった。「ああ、この感情、この真理、これは自分一人ではあるまい。自分のこの涙は万人の涙であろう。自分は自分一人の寂しさに泣いていてはならない。ああ、自分はどうなっても構わない。願わくば、今ひし/\と身に迫り感じる万人の涙のために戦おう!

「地上 地に潜むもの」島田清次郎(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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