小僧の夢(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物
芸術に憧れる銀座の小僧
- 心理
- 青春
- 文字数
- 30,230字
- 読了目安
- 約1時間
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
銀座の商店に奉公する少年の手記という体裁の中編。1917年(大正6年)3月から4月にかけて「福岡日日新聞」に連載された。芸術に憧れながら商人の道を歩まされる十六歳の小僧が、自然主義への反発、音楽への陶酔、そして浅草の見世物小屋で受けた催眠術の体験を書き綴っていく。少年の口を借りて谷崎自身の芸術観が語られる、初期の異色作。
あらすじ
己は庄太郎、十六歳、銀座三丁目の洋酒店・池田屋の小僧である。番頭に叱られながらも、頭のなかは荒唐無稽な妄想でいっぱいだ。芸術とは何なのか。お嬢さんに尋ねれば鼻先で笑われ、シェイクスピアを読んでも妙味は分らず、日本の自然主義者の議論には承服できない。だが筋向いの蓄音器屋から流れるタンホイゼルに、己は魂を酔わされた。芸術は自然の模倣ではない——己はそう直覚する。やがて己は帳場の金を誤魔化しては酒を覚え、浅草へ通うようになった。そこで見た露国美人メリー嬢の魔術。舞台へ上げられ、催眠術をかけられた瞬間の陶酔を、己は日記に書き留める。
登場人物
- 庄太郎 銀座の洋酒店に奉公する十六歳の小僧。この手記の書き手
- お嬢さん 池田屋の娘。庄太郎を「どら焼」と呼んでからかう
- メリー嬢 浅草の見世物小屋に出る露国美人。催眠術の魔術を演じる
冒頭部(原文より)
………己は名前を庄太郎と云って、今年十六歳になる商店の小僧だ。己の勤めて居る商店は、銀座三丁目の大通りにある、池田屋と云う洋酒店だが、京橋近辺に住んで居る人は大概知って居るだろう。日本橋の方から来て、京橋を渡って、五六丁行った左側に、あんまり立派でもないけれど、小綺麗なショウ、ウインドウの附いて居る、二階建て西洋造りの店があるだろう。
「小僧の夢」谷崎潤一郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
あゝ、つまらない、つまらない。己は何とかして、もう一度メリー嬢に会いたい。メリー嬢に会えない迄も、メリー嬢の魔術にかけられた時のような光景と快感とにめぐり会いたい。詩を作ったり、絵を畫いたりする事の出来ない己は、せめてもそう云う方面で、己の藝術慾を満足させたい。………今日の三面記事を見たら、三枝光子と云う二十ばかりの不良少女が、十五六歳の不良少年の親分になって、盛んに悪事を働いて居る記事が出て居る。己も一番、店を逃げ出して、その少女の子分に入れて貰おうか知らん。………
「小僧の夢」谷崎潤一郎(青空文庫)
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