アプリで読む

無料・登録不要

阿部定さんの印象(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

平凡すぎる阿部定像

坂口安吾 1947年(昭和22年)12月 「座談」

文字数
3,584字
読了目安
約7分
表記
新字旧仮名
種別
随筆

この作品について

1947年(昭和22年)12月、雑誌「座談」創刊号に載った随筆。1936年の阿部定事件で知られる阿部定と会った安吾が、その人柄と事件についての考えを書く。実際のお定さんは気立てのよい平凡な下町の女性だったとし、事件を犯罪というより純愛の悲劇として見る。旧仮名で書かれた、当時の世評に逆らう見方が特徴である。

あらすじ

安吾は阿部定に会った印象を、いちばん平凡な下町育ちの女、少しもスレたところのない、気立てのよい人だったと書く。お定さんは三十二で初めて恋をしたと言い、それ以前は男にだまされてばかりだった。安吾は相手の吉さんにはマゾヒズムの傾向があり、首をしめられる陶酔のなかで本当に死んでしまったのだろうと推測する。お定さんは死に気づかず、殺したという罪悪感も薄かった。当時は軍部が戦争熱をかりたて、世相は暗く、新聞が事件を煽りたてたが、人々は内心お定さんに共感していたはずだ。安吾は刑期が長すぎたとし、八百屋お七と比べても可憐な純愛だと述べる。人間にはあらゆる犯罪の要素があるが、お定さんの場合はほとんど犯罪性がない。出所後は変名で静かに暮らしてきたお定さんが、これからは本名を名乗って人のためになる仕事をするという決意を聞き、安吾は喜ぶ。

冒頭部(原文より)

 阿部定さんに会つた感じは、一ばん平凡な下町育ちの女といふ感じであつた。東京下町に生れ、水商売もやつてきたお定さんであるから、山の手の人や田舎育ちの人とは違つてゐるのが当然だが、東京の下町では最もあたりまへな奇も変もない女のひとで、むしろ、あんまり平凡すぎる、さういふ感じである。

「阿部定さんの印象」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 然し今日、八百屋お七がなほ純情一途の悲恋として人々の共鳴を得てゐるのに比べれば、お定さんの場合は、更により深くより悲しく、いたましい純情一途な悲恋であり、やがてそのほのぼのとしたあたゝかさは人々の救ひとなつて永遠の語り草となるであらう。恋する人々に幸あれ。

「阿部定さんの印象」坂口安吾(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品