暁と夕の詩(立原道造)のあらすじ・登場人物
十四行に消えてゆく、夕べの調べ
- 文字数
- 2,529字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
1937年(昭和12年)に刊行された立原道造の第二詩集。第一詩集「萱草に寄す」と同じく、みずから装釘した瀟洒な風信子叢書の一冊として世に出た。十四行からなるソネット形式で統一され、風・秋・夕暮・眠りといったモティーフを、やわらかな口語と多用される字空きによって、消え入るような調べに織り上げる。二十四歳で夭折した詩人が生前に刊行した二冊のうちの一冊であり、その繊細な抒情は日本の近代詩における一つの極点をなす。
あらすじ
「おまへのことでいつぱいだつた 西風よ」と呼びかける「或る風に寄せて」に始まり、詩集は季節と時刻のうつろいをたどっていく。雨の昼、閉ざした窓のうすあかり、噛みしめる寂しい思い——そのすべては、いつのまにか「見知らないものたち」に変わっている。「やがて秋……」では、夕ぐれが親しげに話しかけ、樹木が老いた人の身ぶりのようにあらわな影を夜へ投げるなかで、「かへつてしづかなあさい吐息のやうに」秋が戻ってくる。だがその秋もまた、忘れなかったことのかたみを残しながら、かたみなく過ぎ去っていくだろう。詩は問いかけを繰り返しては答えを得ず、句読点の代わりに置かれた空白のなかへ言葉が消えてゆく。最後の一篇では、うつろう若さを嘆きながら、「僕はあなたを 待つてはをりやしない」と言い、それでもベッドの端に腰かけて何かを見つめている者の影を、昨夜の眠りの秘密を奪ったかのように——と結んで、静かに閉じられる。
冒頭部(原文より)
或る風に寄せて おまへのことでいつぱいだつた 西風よ たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に とざした窗のうすあかりに さびしい思ひを噛みながら おぼえてゐた おののきも 顫へも あれは見知らないものたちだ……
「暁と夕の詩」立原道造(青空文庫)
末尾部(原文より)
ああ そこには だれがゐるの? むなしく 空しく 移る わが若さ! 僕はあなたを 待つてはをりやしない それなのにぢつと それのベツトのはしに腰かけ そこに見つめてゐるのは だれですか? 昨夜の眠りの秘密を 知つて 奪つたかのやうに
「暁と夕の詩」立原道造(青空文庫)
原文を読む
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