夜に就て(立原道造)のあらすじ・登場人物
ゴンゴンの見た不思議な夜
- 文字数
- 3,240字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
立原道造が一九三六年に『椎の木』に発表した散文の童話風の物語。「ゴンゴン」という者が見た夢の話という体裁で、サーカス小屋や少女たちが現れる。詩人立原の夢想と、少女への憧れがやわらかく混じる幻想的な短編。
あらすじ
人は夢のなかに気ままに忍び入ることはできない、夢はシャボン玉のようで、無理に入ろうとすると破れる。ところがゴンゴンという者にはその不思議ができた、と語り手が断って始まる。彼の夢の一つ目の場面「A」は、にぎやかな町の夕方。靄のなかの横町で、ゴンゴンは薄い色で栗毛の馬に乗る二人の少女を描いた看板のサーカス小屋を見つけ、中に入る。舞台では人混みのなかで一種の舞踊が行われている。やがて場面は夜の不思議さへ移り、少女たちが空気のなかで騒ぐ。最後に「もし僕がその少女の肩に手をおいたら、僕の夜は変ってしまうだろう。防ぐすべもない」と書かれて終わる。
冒頭部(原文より)
凡そ人は夢のなかに氣ままにしのびいることの出來ないたちのものである。それは夢といふものが、シヤボン玉に似て、無理になかへおしこまうとするとやぶれてしまふからである。 ところが、ゴンゴンといふ者には、その不思議が出來た。 これは、彼の夢物語であるが、それを諸君にお傳へしよう。
「夜に就て」立原道造(青空文庫)
末尾部(原文より)
星や月のあかるい夜道で一册の本を拾つた人が 家に歸るまでに中に書かれたことを落してしまひました それであくる朝早く行つてみたら 道ばたの草のなかでは女王やポリチネルや行列が牝羊だの孔雀だのと一しよになつてきれいな空氣のなかでさはいでをりました 一生かかつて語りあつても不思議な夜のたくらんだ手品の種はわかりませんでした ああ、もし僕がその少女の肩に手をおいたら、僕の腕のなかにその少女を見出したら、また僕の夜は、變つてしまふだらう。 防ぐすべもない。
「夜に就て」立原道造(青空文庫)
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