アプリで読む

無料・登録不要

優しき歌(立原道造)のあらすじ・登場人物

夢見たものはひとつの幸福

  • 恋愛

立原道造 1947年(昭和22年)

文字数
5,090字
読了目安
約10分
表記
新字旧仮名

この作品について

二十四歳で世を去った立原道造が、最後に書き継いだ詩篇をまとめた詩集。風信子叢書の第四篇として、没後の一九四七年に刊行された。「燕の歌」に始まり、「薊の花のすきな子に」「真冬の夜の雨に」を経て、「夢見たものは ひとつの幸福/ねがつたものは ひとつの愛」とうたう一篇で閉じられる。やわらかな口語と余白の多い行分けが、失われることを知りながらなお願う心を、そのまま音にしている。

あらすじ

「灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつてゐる/とほい村よ」——詩集は、まだ雪の残る春に呼びかける「燕の歌」から始まる。ぎぼうしゅとすげが暮れやすい花を咲かせ、山羊が啼いて一日一日が過ぎていったあの頃。今日もあの向うで、自分と同じように誰かがきっと待っていると信じながら、詩人はやがて訪れる夏の日に、お前の夢へ、僕の軒へ訪ねて行くだろうとうたう。続く「薊の花のすきな子に」の連作では、うすい緑のなかを流れてゆく風が、たったひとつの人の言葉を運び、誰もがほほえみながらそれを受けとる。猟人も盗人もいない、ひろい風と光の万物の世界。「虹の輪」では、雲のようにやわらかな少女の天使の掌が花を播き散らすなかで、ふたりがやさしい樹木のように腕をからませ、をののいている。……しかしこの澄んだ世界は、いつも別れと隣り合わせにある。詩集の終わりで、詩人は山なみのあちらにあるしずかな村を思い描く。明るい日曜日の青い空、日傘をさした田舎の娘らが着かざって唄をうたい、大きなまるい輪をかいて踊っている。低い枝で青い翼の小鳥がそれを告げてうたっている。「夢みたものは ひとつの愛/ねがつたものは ひとつの幸福/それらはすべてここに ある と」。

冒頭部(原文より)

燕の歌 灰色に ひとりぼつちに 僕の夢にかかつてゐる とほい村よ あの頃 ぎぼうしゆとすげが暮れやすい花を咲き 山羊が啼いて 一日一日 過ぎてゐた やさしい朝でいつぱいであつた――

「優しき歌」立原道造(青空文庫)

末尾部(原文より)

 夢見たものは‥‥ 夢見たものは ひとつの幸福 ねがつたものは ひとつの愛 山なみのあちらにも しづかな村がある 明るい日曜日の 青い空がある 日傘をさした 田舎の娘らが 着かざつて 唄をうたつてゐる 大きなまるい輪をかいて 田舎の娘らが 踊ををどつてゐる 告げて うたつてゐるのは 青い翼の一羽の 小鳥 低い枝で うたつてゐる 夢みたものは ひとつの愛 ねがつたものは ひとつの幸福 それらはすべてここに ある と

「優しき歌」立原道造(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品