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恋をしに行く(「女体」につゞく)(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

魂だけの恋を打ち明けに

  • 恋愛
  • 心理

坂口安吾 1947年(昭和22年)1月 「新潮」

文字数
17,770字
読了目安
約36分
表記
新字旧仮名
種別
小説

この作品について

1947年(昭和22年)、「新潮」に発表された坂口安吾の短編。前作『女体』の続編で、肉体のない魂だけの恋を夢見る谷村が、妖婦と噂される信子に愛の告白をしに行く。「僕は景色に恋がしたい」と語る谷村と、「顔のほてり」に予期せぬ情熱を見せる信子。心と肉体、真実と偽りをめぐる、安吾らしい観念的な恋愛小説。『戯作者文学論』の日記に出てくる谷村夫妻の続きにあたる。

あらすじ

谷村は信子に愛の告白に行く途中、駅前から引き返し、友人の藤子に先に打ち明けることにした。彼は肉体のない、魂だけの恋がしたいと思っていたが、自信はなかった。信子は岡本の弟子で、先天的な妖婦、天性の犯罪者だと岡本は言う。何十人もの情夫がいるという噂があり、月々の暮らしぶりは勤めの給料をはるかに超えていた。藤子と夫の上島は、信子には二十人近い情夫がいて誰も愛さない、きっと「私は処女よ」と谷村にも言うだろうと忠告する。谷村は、むしろ信子にだまされたいと思う。冬の日、谷村は数年ぶりに外へ出て、信子の部屋を訪ねる。「僕は景色に恋がしたい」と打ち明ける谷村に、信子は「贋の恋の遊びなら尚好き」と許し、顔をほてらせる。谷村は、そのほてりに、思いがけない肉体的な情熱を見て驚く。やがて二人は夢中のうちに結ばれ、谷村は、このような肉体もありうるのかと思い知る。妻の素子の肉体の醜怪さを思い、魂とは何かを考えるが、すべては爽やかで満たされているのに、ただ一つ満たされないものが残った。

登場人物

冒頭部(原文より)

谷村は駅前まで行つて引返してきた。前もつて藤子にだけ話しておかうと思つたのである。彼は藤子の意見がきゝたかつた。彼は自信がなかつたのだ。そして藤子の口から自信へのいと口をつかみだしたいといふのである。  谷村は信子に愛の告白に行く途中であつた。彼はかねて肉体のない恋がしたいと思つてゐた。たゞ魂だけの、そしてそのために燃え狂ひ、燃え絶ゆるやうな恋がしたいと考へてゐた。

「恋をしに行く(「女体」につゞく)」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

その醜怪を考へた。魂の恋とは、むしろ肉慾の醜怪なこの二人が。彼はさう考へて、その厭らしさに、ほろにがかつた。  魂とは何物だらうか。そのやうなものが、あるのだらうか。だが、何かゞ欲しい。肉慾ではない何かゞ。男女をつなぐ何かゞ。一つの紐が。  すべては爽かで、みたされてゐた。然し、ひとつ、みたされてゐない。あるひは、たぶん魂とよばねばならぬ何かゞ。

「恋をしに行く(「女体」につゞく)」坂口安吾(青空文庫)

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