安吾武者修業馬庭念流訪問記(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
夢の村の百姓剣法
- 文字数
- 10,724字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 群馬県
この作品について
1954年(昭和29年)4月、雑誌「講談倶楽部」に載った訪問記。少年時代に読んだ立川文庫のなかで、愛着をもっていた馬庭念流が実在し、いまも群馬県の馬庭の里に伝わっていることを知った安吾が、寒稽古の開始日に樋口道場を訪ねる。村人が農作業のかたわら剣を学ぶ里の風景と、類のない実戦的な剣法を、愛情をこめて紹介する。
あらすじ
安吾は少年時代、立川文庫の中で馬庭念流をひそかに愛していた。農民が野良で伝える風変わりな剣術が、実在することを桐生に住んで知り、1月17日の道場開きに訪ねる。道場の門内には露店が並び、まるで村祭りで、家元の樋口家も質素な百姓屋だった。樋口家は木曾義仲の四天王樋口兼光の子孫で、八世の又七郎が馬庭に定住して百姓剣法の性格が決まった。構えは右足を前、剣を横に寝かせてぶらぶらと調子をとる「無構え」で、突然とびだして一撃で決める実戦専門の剣法だと安吾は見る。千葉周作一門との伊香保でのいさかいの話も紹介する。さらに、一子相伝の「虎の巻」が咒文ばかりで念流と無関係な古い兵法の遺物らしいことに興味をひかれ、諸国の源氏が野良を耕しながら武を磨いた昔を思う。村の伝統が絶えないように祈って結ぶ。
冒頭部(原文より)
私たちの少年時代には誰しも一度は立川文庫というものに読みふけったものである。立川文庫の主人公は猿飛佐助、百地三太夫、霧隠才蔵、後藤又兵衛、塙団右衛門、荒川熊蔵などという忍術使いや豪傑から、上泉伊勢守、塚原卜伝、柳生十兵衛、荒木又右衛門などの剣客等、すべて痛快な読み物である。
「安吾武者修業馬庭念流訪問記」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
この村の伝統の絶えざらんことを心から祈らずにいられない。 読者の皆さんも道場びらきのお祭り風景を写真で味っていただきたい。他流の道場にみられる武芸者のいかめしさは全く見当らない。村の園遊会なのだ。ただほほえましいだけである。
「安吾武者修業馬庭念流訪問記」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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