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青い絨毯(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

死の家と青春の暗さ

坂口安吾 1955年(昭和30年)4月 「中央公論」

文字数
9,490字
読了目安
約19分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

坂口安吾が没した1955年に「中央公論」へ載った回想記。同人雑誌「言葉」「青い馬」の編集部屋に使った芥川龍之介の書斎と、そこに敷かれていた青い絨毯の記憶をたどる。同人の葛巻義敏との徹夜の口論、京都での病臥と金に窮した日々など、若い日の思い出を重ねながら、青春はなぜ暗く思い出されるのかを考える。自身を「野武士」に例える自嘲まじりの語り口が特徴である。

あらすじ

安吾たちが飜訳雑誌「言葉」や同人雑誌「青い馬」を編集した部屋は、芥川龍之介の書斎だった。主に世話をしたのは芥川の甥の葛巻義敏で、彼は質の悪い原稿をのせることを嫌い、安吾と毎晩のように口論する。二人は徹夜で原稿を書き、安吾は原書を一晩で訳しあげ、分からぬ箇所は飛ばしてしまった。葛巻の純粋な正論に、野武士のような自分は内心いつも負けていた。話は京都伏見の下宿での病臥へ移る。背中の腫れ物で高熱を出し、孤独のなかで借金取りの訪れさえなつかしかった頃、葛巻に電報を打ち為替が届く。ところが訪ねてきた友人と酒を飲んで医療費を使い果たし、翌朝には腫れ物が自然に破れて熱が下がっていた。貧乏も恋の苦しみも今はなつかしいのに、芥川の書斎で過ごした青春の日々だけは、日当りのよい部屋だったはずなのに暗さばかりが思い出される。安吾はそれを、あの家ではなく「あの時期」が暗いのだと考え、青春とはもともと暗いものかもしれないと結ぶ。

冒頭部(原文より)

 僕らが「言葉」という飜訳雑誌、それから「青い馬」という同人雑誌をだすことになって、その編輯に用いた部屋は芥川龍之介の書斎であった。というのは、同人の葛巻義敏が芥川の甥で、彼はそのころ二十一、二の若年だったが、芥川死後の整理、全集出版など責任を負うて良くやっており、同人雑誌の出版に就ても僕らの知らないことに通じていて、彼が主としてやってくれたからである。

「青い絨毯」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その葛巻は痩せる思いで令嬢に恋いこがれ致死量に近いカルモチンをガブガブのんで辛じて眠りをとっている。世はままならぬものである。先年葛巻が結婚のとき、結婚記念にあの絨毯を燃しちゃいなさいと手紙を書いたが、この手紙はとうとう出しそこなってしまった。

「青い絨毯」坂口安吾(青空文庫)

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