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梅龍の話(小山内薫)のあらすじ・登場人物

水が出たのは明くる日の晩よ

  • 心理

小山内薫 1911年(明治44年)12月 「中央公論」

文字数
4,516字
読了目安
約9分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

1911年(明治44年)、「中央公論」に発表された小山内薫の短編。赤坂のお酌(少女芸妓)梅龍が、去年の夏に箱根塔ノ沢で山津波に遭った一夜を、座敷でそのまましゃべっているように語り通す。地の文はほとんどなく、始めから終わりまで少女のおしゃべりが続くという大胆な形式で、当時の花柳界の言葉づかいと気質を写しとった。命からがら逃げまどう夜でも缶詰を懐にねじ込み、食べ物の話ばかりが出てくる梅龍の饒舌が、災害の混乱をかえって生々しく浮かび上がらせる。

あらすじ

赤坂のお酌・梅龍が、去年の夏に箱根の塔ノ沢の宿「鈴木」で遭った大水の一夜を語る。一座は日本一とまで唄われた美人の姐さん、同じ家の玉龍、新橋の若菜、女中のお富と梅龍の五人。眼の涼しい可愛い子だが、食べることにかけては若菜と並ぶ大関で、話に食べ物が出てこないことは決してない。着いた翌日の晩、湯に入って洗粉を忘れたので卵で髪を洗っていると、急に湯が黒くなり、杉っ葉が浮いてきた。お富が「水ですから、逃げるんですから」と飛んでくる。洗い髪をタオルで向こう鉢巻にし、宿の貸浴衣を引きずって外へ出るとき、食べ物がなくなると困るからと牛の缶詰と福神漬の缶詰を懐にねじ込んだ——ところが口の開いた方を下にしたので、お露が腹の中でぐじゃぐじゃになった。真っ暗な土砂降りのなか、半鐘と人の騒ぐ声だけが響く。向かいの芸者屋へ逃げ込み、そこで夜を明かして山越えで帰った。その後、赤坂へ来た箱根の芸者から、あの晩よそ行きの下駄を二足とも履いて行かれて困った、という話を聞かされる。思い当たった梅龍は、大嫌いな詫びを言いに行くのだが——。

登場人物

冒頭部(原文より)

 著いた晩はどうもなかつたの。繪端書屋の女の子が、あたしのお煎餅を泥坊したのよ。それをあたしがめつけたんで大騷ぎだつたわ。でも姐さんが可哀さうだから勘辨してお遣りつて言ふから、勘辨してやつたの。赤坂のお酌梅龍が去年箱根塔の澤の鈴木で大水に會つた時の話をするのである。

「梅龍の話」小山内薫(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それから、あたしその小玉さんとか言ふ人にあやまつたわ。あたし、あやまるの大嫌ひだけども、泥坊つて言はれるのは厭だからあやまつたの。そしたら、向うぢやもうあたしの顏よく覺えてゐなかつたわ。損しちやつたわねえ。

「梅龍の話」小山内薫(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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