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吉原新話(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

吉原の百物語に婆が来る

  • 怪奇
  • 心理

泉鏡花 1911年(明治44年)3月

文字数
37,100字
読了目安
約1時間14分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

泉鏡花の短編。吉原の引手茶屋の二階で開かれた百物語の会を舞台に、参加者の語る不気味な体験と、茶屋の娘が語る芸者の哀話とが重なり合って、夜の座敷に異形のものを呼び出す。本文末に明治四十四年三月の日付がある。華やかな廓の気配と怪談の寒気が同居する一編。

あらすじ

閏年の梅雨明けが遅れた七月末の夜、吉原の引手茶屋・蔦屋の二階に、雑貨店主の沢岡を幹事とする十人あまりが集まり、夜通しの百物語を始める。記者の佐川民弥、琴の師匠、洋画家、子爵、二人の婦人など顔ぶれはさまざまで、茶屋の姉御お才と、その娘分のお三輪が給仕をする。話が進んだころ、一座はまだ怪談を語っていなかった民弥に水を向ける。民弥は、その日の夕方、谷中の暗がり坂で、荒縄に腐った烏の死骸を下げた、男とも女ともつかない老人に出会った話をする。老人は「火の車」とつぶやき、自分は吉原へ「とりあげ」に行くのだと言った。お三輪は、仲の町の芸者・照吉が、京都の大学にいる病弱な弟の身代わりに死のうとして、寮で静かにその時を待っていると語る。やがて座敷の物干の窓に、手拭を頭に載せた老婆が覗くのを人々が見はじめる。夜が更けるにつれ、座敷に紛れ込んだその老婆は、幹事や子爵と言葉を交わし、残酷なほど平然と人間の命を語ってゆく。老婆は去り際に烏を呼び、物干に腐った烏の死骸が落ちる。そのあと、向かいの三階では女郎の無理心中が起こる。翌晩、民弥は家で妻の梅次にこの夜のことを語り、照吉は弟だけでなく皆の身代わりになったように思う、と涙ぐむ。

登場人物

冒頭部(原文より)

 表二階の次の六畳、階子段の上り口、余り高くない天井で、電燈を捻ってフッと消すと……居合わす十二三人が、皆影法師。  仲の町も水道尻に近い、蔦屋という引手茶屋で。間も無く大引けの鉄棒が廻ろうという時分であった。

「吉原新話」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 と民弥は言って、愁然とすると、梅次も察して、ほろりと泣く。 「ああ、その弟ばかりじゃない、皆の身代りになってくれたように思う。」

「吉原新話」泉鏡花(青空文庫)

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