真景累ヶ淵(三遊亭円朝)のあらすじ・登場人物
代を越えて祟る因果の恐ろしさ
- 怪奇
- 心理
- 文字数
- 210,386字
- 読了目安
- 約7時間1分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
- 茨城県
この作品について
旗本・深見新左衛門が金貸しの鍼医・皆川宗悦を斬り殺したことに端を発し、二つの家の子孫が代を越えて因果に呑み込まれていく——。宗悦の娘・豊志賀と若い新吉の悲恋、その怨霊、さらに下総羽生村の累ヶ淵を舞台にした殺生と敵討ちを、全九十七章にわたって描く三遊亭円朝の怪談噺の傑作。「神経(しんけい)」を「真景」に掛けた表題どおり、幽霊を信じぬ開化の世に、なお付きまとう因果の恐ろしさを説く。
あらすじ
旗本・深見新左衛門は、金の返済を迫ってきた鍼医で金貸しの皆川宗悦を、はずみに斬り殺してしまう。この殺生が因果の発端となり、深見・皆川の両家は代を越えて次々と不幸に呑み込まれていく。宗悦の遺児で富本節の女師匠となった豊志賀は、若く美しい弟子の新吉と道ならぬ恋に落ちるが、年の差からくる嫉妬と病に苦しんだ末、新吉を恨みながら世を去る。豊志賀の怨霊は新吉につきまとい、彼の関わる女たちが次々と非業の最期を遂げていく。やがて物語は下総国羽生村の累ヶ淵へ移り、素性を知らぬ者どうしが互いに殺め合う救いのない因果が続くが、その連鎖は、兄と姉を殺された惣吉が悪党・安田一角を討ち果たす敵討ちによって、ようやく清算される。幽霊を神経の迷いと片づける明治の世にあって、円朝は逃れられぬ因果の恐ろしさを語り尽くす。
登場人物
- 新吉(しんきち) 深見家にゆかりの若者。豊志賀と恋仲になり、その怨霊につきまとわれて多くの女を死に追いやる。
- 豊志賀(とよしが) 皆川宗悦の遺児。富本節の女師匠。若い新吉を恋慕し、嫉妬と病に死んで怨霊となる。
- 皆川宗悦(みながわそうえつ) 鍼医で金貸し。深見新左衛門に斬り殺され、因果の発端となる。
- 深見新左衛門(ふかみしんざえもん) 旗本。借金の返済を迫った宗悦を斬り殺す。
- お累(おるい)/累 下総羽生村の因果に連なる女。累ヶ淵の名の由来となる。
- 惣吉(そうきち) 兄と姉の敵を討ち、のちに名主・惣右衛門の名を継ぐ。
- 安田一角(やすだいっかく) 悪事を重ねる浪人。惣吉に討たれる。
冒頭部(原文より)
今日より怪談のお話を申上げまするが、怪談ばなしと申すは近来大きに廃りまして、余り寄席で致す者もございません、と申すものは、幽霊と云うものは無い、全く神経病だと云うことになりましたから、怪談は開化先生方はお嫌いなさる事でございます。それ故に久しく廃って居りましたが、今日になって見ると、却って古めかしい方が、耳新しい様に思われます。これはもとより信じてお聞き遊ばす事ではございませんから、或は流違いの怪談ばなしがよかろうと云うお勧めにつきまして、名題を真景累ヶ淵と申し、下総国羽生村と申す処の、累の後日のお話でございまするが、これは幽霊が引続いて出まする、気味のわるいお話でございます。
「真景累ヶ淵」三遊亭円朝(青空文庫)
末尾部(原文より)
惣「関取誠に有難う、此の安田一角め兄さん姉さんの敵思い知ったか」 多「此の野郎助太刀だぞ」 と惣吉と両人で無茶苦茶に突くばかり、其のうち一角の息が止ると、二人共がっかりしてペタ/\と坐って暫らくは口が利けません。花車は安田一角の髻を取り、拳を固めてポカ/\打ち、 花「よくも汝は恩人の旦那様を斬りやアがった、お隅様を返討にしやアがったな此の野郎」 といいながら鬢の毛を引抜きました。同類は皆ちり/″\に逃げてしまったから、其の村方の名主へ訴え、名主からまたそれ/″\へ訴え、だん/\取調べになると、全く兄姉の仇討に相違ないことが分り、花車は再び江戸へ引返し、惣吉は十六歳の時に名主役となり、惣右衞門の名を相続いたし、多助を後見といたしました。花車が手玉にいたしました石へ花車と彫り附け、之を花車石と申しまして今に下総の法恩寺中に残りおりまする。是で先ずお芽出度累ヶ淵のお話は終りました。
「真景累ヶ淵」三遊亭円朝(青空文庫)
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