塩原多助一代記(三遊亭円朝)のあらすじ・登場人物
正直と勤勉で身代を築いた男
- 心理
- 文字数
- 135,699字
- 読了目安
- 約4時間31分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 群馬県
- 東京都
この作品について
上州沼田を追われて江戸へ下り、本所の炭屋に奉公した塩原多助が、正直と勤勉だけを元手に一代で大身代を築き上げるまでを描く、三遊亭円朝の立身出世の人情噺。愛馬「青」との涙の別れをはじめ、艱難に負けず節義を守り抜く多助の姿は明治の修身の鑑ともてはやされ、歌舞伎にも移された。「本所に過ぎたるものが二つあり津軽大名炭屋塩原」と謡われた実在の豪商の生涯に取材する。
あらすじ
上州沼田の塩原家に養子として育った多助は、養父・角右衛門の亡きあと、家を我が物にしようとたくらむ悪党・原丹治らに疎まれ、命さえ狙われる身となる。危ういところを愛馬の「青」に救われた多助は、涙ながらに青と別れ、わずか六百文の銭だけを懐に故郷を捨てて江戸へ下る。本所の炭屋・山口屋に奉公した多助は、どんな辛抱にも耐え、正直と勤勉をただ一つの元手として黙々と働きつづける。やがて主人に見込まれてのれん分けを許され、実直な商いで少しずつ身代を大きくしていく。艱難に負けず節義を守り抜いた多助は、ついに二十四か所もの地面を持ち、「本所に過ぎたるものが二つあり津軽大名炭屋塩原」と江戸中に謡われるほどの分限者となり、荒れ果てた沼田の生家をも立派に再興する。学問はなくとも身に具わった正直と孝心が、一人の炭売りを一代の豪商へと押し上げてゆく立身出世の物語である。
登場人物
- 塩原多助(しおばらたすけ) 上州沼田の塩原家の養子。正直と勤勉を元手に、江戸で一代の大身代を築く。
- 角右衛門(かくえもん) 多助の養父。実父も同姓同名の角右衛門であった。
- 原丹治(はらたんじ) 塩原の家を乗っ取ろうとたくらむ悪党。多助の命を狙う。
- 青(あお) 多助の愛馬。命を狙われた多助を救い、峠で涙の別れを交わす。
- 山口屋 多助が奉公する本所の炭屋。多助の実直さを見込んでのれん分けを許す。
冒頭部(原文より)
扨申上げまするお話は、鹽原多助一代記と申しまして、本所相生町二丁目で薪炭を商い、天保の頃まで伝わり、大分盛んで、地面二十四ヶ所も所持して居りました。其の元は上州沼田の下新田から六百文の銭をもって出て参りました身代でござります。其の頃の落首に「本所に過ぎたるものが二つあり津軽大名炭屋鹽原」と歌にまで謡われまして、十万石のお大名様と一緒に喩えられます位になる其の起源は、僅かの端銭から取立てまして、五代目まで続きました。
「塩原多助一代記」三遊亭円朝(青空文庫)
末尾部(原文より)
それから夫婦共稼ぎを致しまして、少しも油断をしませんから、忽ち身代を仕出しましたに付、多助は予ての心願通り沼田の家を立派に再興致し、分家の家も立てまして、今日まで鹽原の家は連綿と致して居ります。また多助は江戸表に置きましても稼業に出精しまして、遂に巨きな身代となり、追々に地所を買入れ、廿四ヶ所の地面持とまでなり、本所に過ぎたるものが二つあり、津軽大名炭屋鹽原と世に謡わるゝ程の分限に数えられ、其の家益々富み栄えましたが、只正直と勉強の二つが資本でありますから、皆様能く此の話を味って、只一通りの人情話とお聞取りなされぬように願います。
「塩原多助一代記」三遊亭円朝(青空文庫)
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