怪談牡丹灯籠(三遊亭円朝)のあらすじ・登場人物

カランコロンと通う美女の亡霊

作者
三遊亭円朝
発表
1884年(明治17年)7月
種別
小説
ジャンル
  • 怪奇
  • 心理
舞台
  • 東京都
文字数
121,700字
読了目安
約4時間3分
表記
新字新仮名

この作品について

盆の夜、牡丹の灯籠を提げてカランコロンと通う美女の亡霊——。旗本の娘お露と浪人・萩原新三郎の悲恋を軸に、忠僕・孝助の仇討ちや人々の欲得がからみ合う因果を描く、三遊亭円朝の怪談噺の代表作。円朝の口演を速記した本作は、言文一致体の先駆としても文学史に名を残す。

あらすじ

浪人・萩原新三郎は、医者の山本志丈に誘われて訪れた飯島平左衛門の屋敷で、その娘・お露と互いに一目で心を通わせる。しかし身分違いの恋は成就せず、逢瀬もかなわぬまま、お露は新三郎を慕いつづけたすえに病で息を引き取り、女中のお米も後を追うように世を去る。それを知らぬ新三郎が失意に沈む盆の夜、カランコロンと下駄を鳴らし、牡丹の灯籠を提げたお露とお米が彼のもとに現れ、以後、毎夜のように通ってくる。隣家の伴蔵がその正体を覗き見て、通ってくるのが二人の亡霊だと気づく。新三郎は高僧から授かった御札とお経で家を守るが、亡霊に泣きつかれ、大金で買収された伴蔵夫婦が御札を剥がしてしまい、新三郎はついにお露の霊に取り殺される。一方、飯島家では、悪侍・宮野辺源次郎と妾のお国が結託して主人・平左衛門を亡き者にし、家を我が物にしようと企む。主家に忠義を尽くす下男の孝助は、実は平左衛門にゆかりの深い身の上であり、亡き主君の仇を討つべく執念を燃やす。伴蔵とお国の悪事もやがて綻びを見せ、絡み合った因果は、孝助が敵を討ち果たすことでめぐり合う。悪は滅び、善が報われる勧善懲悪の物語である。

登場人物

人物相関図

一目で思い合う。亡霊となって通う二人を引き合わせる一人娘。寮へ離される自ら討たれる道を選ぶ妾。主人殺しを企てる密通する盗賊に仕立てようとする百両で御札を剥がす女房。のち斬り殺す女中。灯籠を提げて先に立つ海音如来と御札を貸すりょうせきおしょう良石和尚谷中三崎の新幡随院の名僧やまもとしじょう山本志丈飯島家出入りの幇間医者。喋りの男いいじまへいざえもん飯島平左衞門旗本。真影流の極意を極めた名人おくにお國もと奥方付きの女中、のち平左衛門の妾はぎわらしんざぶろう萩原新三郎根津清水谷の浪人。二十一歳の美男おつゆお露飯島平左衛門の一人娘。十七歳こうすけ孝助飯島家の草履取。のち相川家の養子みやのべげんじろう宮野邊源次郎飯島家の隣家の次男。放蕩者ともぞう伴藏新三郎の孫店に住む男。三十八歳の怠け者おみねお峰伴蔵の女房。三十五歳。悪知恵も度胸も夫より上およねお米お露付きの女中。三十ほどの年増
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「厳選あらすじ」

アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。

  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 発端──刀屋の前の一刀
  5. 五 牡丹の灯籠とカラコンカラコン
  6. 六 御札を剥がす百両
  7. 七 飯島家の崩壊──錆槍と遺書
  8. 八 栗橋・関口屋の栄華と土手の殺し
  9. 九 結末──宇都宮の敵討ち
  10. 十 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

 寛宝三年の四月十一日、まだ東京を江戸と申しました頃、湯島天神の社にて聖徳太子の御祭礼を致しまして、その時大層参詣の人が出て群集雑沓を極めました。こゝに本郷三丁目に藤村屋新兵衞という刀屋がございまして、その店先には良い代物が列べてある所を、通りかゝりました一人のお侍は、年の頃二十一二とも覚しく、色あくまでも白く、眉毛秀で、目元きりゝっとして少し癇癪持と見え、鬢の毛をぐうっと吊り上げて結わせ、立派なお羽織に結構なお袴を着け、雪駄を穿いて前に立ち、背後に浅葱の法被に梵天帯を締め、真鍮巻の木刀を差したる中間が附添い、此の藤新の店先へ立寄って腰を掛け、列べてある刀を眺めて。 侍「亭主や、其処の黒糸だか紺糸だか知れんが、あの黒い色の刀柄に南蛮鉄の鍔が附いた刀は誠に善さそうな品だな、ちょっとお見せ」 亭「へい/\、こりゃお茶を差上げな、今日は天神の御祭礼で大層に人が出ましたから、定めし往来は埃で嘸お困りあそばしましたろう」  と刀の塵を払いつゝ、 亭「これは少々装飾が破れて居りまする」 侍「成程少し破れて居るな」 亭「へい中身は随分お用になりまする、へいお差料になされてもお間に合いまする、お中身もお性も慥にお堅い品でございまして」

『怪談牡丹灯籠』三遊亭円朝(青空文庫)

末尾部(原文より)

母上様は先程息がきれましたというから、この儘では置けないというので、御領主様へ届けると、敵討の事だからというので、孝助は人を付けて江戸表へ送り届ける。孝助は相川の所へ帰り、首尾よく敵を討った始末を述べ、それよりお頭小林へ届ける。小林から其の筋へ申立て、孝助が主人の敵を討った廉を以て飯島平左衞門の遺言に任せ、孝助の一子孝太郎を以て飯島の家を立てまして、孝助は後見となり、芽出度く本領安堵いたしますと、其の翌日伴藏がお仕置になり、其の捨札をよんで見ますと、不思議な事で、飯島のお嬢さまと萩原新三郎と私通いた所から、伴藏の悪事を働いたということが解りましたから、孝助は主人の為め娘の為め、萩原新三郎の為めに、濡れ仏を建立いたしたという。これ新幡随院濡れ仏の縁起で、此の物語も少しは勧善懲悪の道を助くる事もやと、かく長々とお聴にいれました。

『怪談牡丹灯籠』三遊亭円朝(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

近い作品