心中(森鴎外)のあらすじ・登場人物
雪の夜に鳴るひゅうひゅうの音
- 心理
- 怪奇
- 文字数
- 8,515字
- 読了目安
- 約17分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
『中央公論』1911年8月号に載った短編。川桝という料理店の女中お金が、客に決まって語って聞かせる実話を、聞き手の「僕」が書き留めるという枠組みで語る。雪の夜、女中部屋で寝ていた女たちが耳にした奇妙な「ひゅうひゅう」という音の正体を、一夜のうちに起こった出来事として描く。作中で語り手は、料理店の名は遠慮して偽名にしてあると断っている。
あらすじ
料理店「川桝」の女中お金が、客に決まって話して聞かせる話である。暮れ、忘年会続きの雪の夜、二階の女中部屋で目を覚ましたお金は、隣のお松と新参のお花が連れ立って便所へ立つのを見送る。そのとき、お花の隣の寝床、お蝶の床が空いているのに気づく。お蝶は下野結城の機屋の一人娘で、婿取りを嫌い、書生の佐野と思い合って家出して来た女中だった。働きぶりが良く、店の信用も厚い。その晩も宵に佐野が会いに来ていた。一方、暗い廊下を歩くお松とお花は、便所の近くで、息をするような「ひゅうひゅう」という音を聞く。四畳半の障子をお松が開けると、二人は声を上げ、お花は気絶する。四畳半では、気管を切られたお蝶がまだ息があり、ひゅうひゅうという音は、傷口から息をする音だった。傍らには、自分の頸を深く切った佐野が死んでいた。床の間の連名の遺書には、機屋が破産しそうなのはお蝶が親の言葉に背いたためで、お蝶が死ねば債権者も過酷な手段は取るまいと書いてあった。
登場人物
- お金 川桝の女中。客に話をする語り手
- お松 気丈な年上の女中
- お花 色白の新参の女中
- お蝶 下野結城の機屋の娘。評判のよい女中
- 佐野 お蝶の恋人の書生
冒頭部(原文より)
お金がどの客にも一度はきっとする話であった。どうかして間違って二度話し掛けて、その客に「ひゅうひゅうと云うのだろう」なんぞと、先を越して云われようものなら、お金の悔やしがりようは一通りではない。なぜと云うに、あの女は一度来た客を忘れると云うことはないと云って、ひどく自分の記憶を恃んでいたからである。
「心中」森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
川桝へ行く客には、お金が一人も残さず話すのだから、この話を知っている人は世間に沢山あるだろう。事によると、もう何かに書いて出した人があるかも知れない。
「心中」森鴎外(青空文庫)
原文を読む
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