カズイスチカ(森鴎外)のあらすじ・登場人物
千住の診療所で見た三つの症例
- 心理
- 文字数
- 8,717字
- 読了目安
- 約17分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
『三田文学』に載った短編。題はラテン語で「症例集」を意味する casuistica に由来し、医学士の花房が、学生時代から千住の父の診療所で代診をしたころの記憶の中から、三つの症例を選んで語る。町医者として一人ひとりの病人に全幅の注意を傾ける老医の姿と、したいことが別にあるような心持で診察する青年医の対比が軸になる。老医の姿には鷗外の父が重ねられているとされる。
あらすじ
医学士の花房は、卒業の少し前から休みのたびに千住の父の診療所で代診の真似事をしていた。盆栽と煎茶を道楽とする老医は、病人が軽くても重くても、茶を啜るときも盆栽を眺めるときも、全幅の精神で目の前のことに向かう。花房はいつも別にしたいことがあるような心持で病人を診ており、父に及ばないのはそこだと気づいて、深く尊敬するようになる。そのころの記憶に残る症例が三つある。一つ目は、骨牌会で大笑いした拍子に顎が外れた青年で、花房は見事に整復し、父は「骨の形さえ知っていれば秘密は無い」と学問のありがたさを語る。二つ目は夏、百姓が「倅が一枚板になった」と訴えて来た病人で、花房は敷居をまたぐ刹那に破傷風と診断し、大量のクロラールで治療して全快させる。三つ目は秋の土曜、腹が張るといって土地の医者を数軒回って来た若い女の診察である。花房は聴診器で胎児の心音を聴き取り、書生の佐藤に「生理的腫瘍だ」と告げる。子のない寡婦だったので、ほかの医者は妊娠に気づかなかったのである。
登場人物
- 花房 医学士。休みに千住の父の診療所で代診をする
- 花房の父(老翁) 千住の町医者。盆栽と煎茶が道楽
- 佐藤 診療所の書生。越後生まれ
冒頭部(原文より)
父が開業をしていたので、花房医学士は卒業する少し前から、休課に父の許へ来ている間は、代診の真似事をしていた。
「カズイスチカ」森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
子が無くて夫に別れてから、裁縫をして一人で暮している女なので、外の医者は妊娠に気が附かなかったのである。 この女の家の門口に懸かっている「御仕立物」とお家流で書いた看板の下を潜って、若い小学教員が一人度々出入をしていたということが、後になって評判せられた。
「カズイスチカ」森鴎外(青空文庫)
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