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手紙(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

土産にわたす一通の手紙

  • 心理

夏目漱石 1911年(明治44年) 「東京朝日新聞」

文字数
11,841字
読了目安
約24分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

モーパッサンとプレヴォーの小品が、宿屋の引出しから出てきた手紙をそのまま転載する体裁をとっていることを枕に、「自分」もまた同じ経験をした——という書き出しから始まる短編。旅先の宿で見つけた一通の手紙は、婚約者のある従弟・重吉の秘密にかかわるものだった。

あらすじ

モーパッサンの「二十五日間」も、プレヴォーの「不在」も、宿屋の引出しから出てきた原稿や手紙をそのまま転載する体裁をとっている。二つともよく似た趣向なので、新しいほうが古い人のあとを踏襲したのではないかという疑いさえ差しはさめるくらいだが、それは自分にはどうでもよろしい——「自分」はそう書き出す。ただ自分もつい近ごろ、これと同様の経験をしたことがある。それ以来、世の中には似たことがずいぶんたくさんあるものだという気になり、むしろ偶然の重複に咏嘆するような心持ちになったので、つい二人の作をここに並べてあげたくなったのである。……旅先の宿で見つかった一通の手紙は、従弟の重吉にかかわるものであった。重吉には縁談がまとまりかけている。「自分」は手紙のことを伏せたまま重吉と会い、話をひととおり聞いたうえで、破談を主張してみせる。泣きついてくる重吉に、では女を迎えるまでの謹慎と後悔の証拠として、月々の俸給から十円ずつ送って結婚費用の一端とするなら内済にして勘弁してやろうと持ちかける。十円を五円に負けてくれと言うのを聞き入れず、とうとうこちらの言い条どおりに取り決めた。そして停車場。窓から首を出して重吉の羽二重の襟と角帯と白足袋を得意げに眺めていた「自分」は、いよいよ車輪が回りはじめたきわどい瞬間をわざと見はからって、隠袋から今朝の手紙を出し、「おいお土産をやろう」と言いながら、できるだけ長く手を伸ばした。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  モーパッサンの書いた「二十五日間」と題する小品には、ある温泉場の宿屋へ落ちついて、着物や白シャツを衣装棚へしまおうとする時に、そのひきだしをあけてみたら、中から巻いた紙が出たので、何気なく引き延ばして読むと「私の二十五日」という標題が目に触れたという冒頭が置いてあって、その次にこの無名式のいわゆる二十五日間が一字も変えぬ元の姿で転載された体になっている。

「手紙」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

 いよいよ発車の時刻になって、車の輪が回りはじめたと思うきわどい瞬間をわざと見はからって、自分は隠袋の中から今朝読んだ手紙を出して、おいお土産をやろうと言いながら、できるだけ長く手を重吉の方に伸ばした。重吉がそれを受け取る時分には、汽車がもう動きだしていた。自分はそれぎり首を列車内に引っ込めたまま、停車場をはずれるまでけっしてプラットフォームを見返らなかった。

「手紙」夏目漱石(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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