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長塚節氏の小説「土」(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

新進作家を世に紹介する老婆心

夏目漱石 

文字数
1,420字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名

この作品について

長塚節の小説「土」を朝日新聞に載せるにあたり、漱石が書いた紹介の文章。無名の新進作家が批評家に見落とされることへの懸念と、型に入った批評の弊を述べ、長塚節の紀行文への評価と、新しい作家を紹介する老婆心を語る。当時の漱石の批評家としての姿勢がよく出ている。

あらすじ

漱石は二つの考えがあったと言う。一つは、すでに認められた作家の特色を物差しにして新作に向かうと、読まないうちから型に堕ちた批評になるので、世間が認めなかった新しい趣味を紹介する方が評家には痛快だということ。もう一つは、文芸雑誌が増え、評論家が全てを熟読できず、無名の人のよい作が見落とされるという事実で、青木健作の「虻」が好例だという。そのため、朝日新聞に長塚節の「土」を載せるのも、その主意の一端である。長塚節の佐渡紀行が普通の小説より面白かったこと、若いのに落ち着いて、時好を追わない人であること、作品の成功を祈ることを書く。有名な学者ミルが若いテニソンを紹介し、次はブラウニングを紹介しようとしたが、編集者が埋草に「ポーリン是は譫言なり」と書いていたため、ブラウニングが世に知られるのが二十年遅れたという逸話を挙げ、自分は無責任な評論家から有望な人を救う老婆心で紹介するのだと結ぶ。

冒頭部(原文より)

 一方に斯んな考えがあった。―― 好い所を世間から認められた諸作家の特色を胸に蔵して、其標準で新しい作物に向うと、まだ其作物を読まないうちに、早く既に型に堕在している。

「長塚節氏の小説「土」」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

 余が新しい作家を紹介するのは、ミルを以て自ら任ずると云うより、かかる無責任な評論家の手から、望みのある人を救おうとする老婆心である。

「長塚節氏の小説「土」」夏目漱石(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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