ケーベル先生(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
静かに暮らす老教師の肖像
- 文字数
- 3,238字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
東京帝国大学で哲学や美学を教えたラファエル・フォン・ケーベルの人柄を、その家に招かれた夕べの訪問記として描いた随筆。漱石は大学院に入った年に先生の美学の講義を聴いた。日本に来て十八年、質素な書斎で静かに暮らす老教師の姿を、簡素だが印象深い筆致で記す。弟子の安倍能成を伴った訪問で、文中の問答には先生の気質がよく出ている。
あらすじ
木の葉の間の高い窓にケーベル先生の頭が見え、「余」は安倍君と先生の住む崖上の古い家を訪ねる。周囲には新しい立派な家が建ち並ぶのに、先生の家だけが過去の記念のように古ぼけている。二階の書斎には大きな机と色褪せた椅子、煙草と灰皿があるだけで、書物の背も見えない。先生は日本に来て十八年、淋しくはないか、西洋へ帰りたくないかと聞かれても、それほどではない、ただ日本には演奏会と芝居と図書館と美術館がないのが不便だと答える。ただし一度日本を離れるなら二度と帰らないと言う。先生はかつて烏を飼っていたが、寒い晩に凍えて死んだ。蝙蝠や日暮しの話、菊や椿の話をし、レモン水と珈琲を飲み、食卓を囲んだ。先生は演奏会をすべて謝絶し、自分の部屋で自分のためにだけピアノを弾く。学生は先生を最も尊敬する教授に挙げるだろうと「余」は思い、先生はこの学生のために日本にいるのだと考える。別れ際、先生が引用したポーの句を思い出す。
冒頭部(原文より)
木の葉の間から高い窓が見えて、その窓の隅からケーベル先生の頭が見えた。傍から濃い藍色の煙が立った。先生は煙草を呑んでいるなと余は安倍君に云った。 この前ここを通ったのはいつだか忘れてしまったが、今日見るとわずかの間にもうだいぶ様子が違っている。
「ケーベル先生」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
そうして一度日本を離れればもう帰らないと云われた時、先生の引用した“no more, never more.”というポーの句を思い出した。
「ケーベル先生」夏目漱石(青空文庫)
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