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写生文(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

大人が子供を見る眼で書く

夏目漱石 

文字数
5,550字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名

この作品について

漱石が、写生文家の作者の心的状態を論じた評論。写生文家は泣く人を叙して自分は泣かず、大人が子供を見るような態度で人事を見ると説明する。俳句から生まれた写生文の特色を、筋のなさや滑稽味と結びつけて論じている。『吾輩は猫である』を書いた漱石の文章観を知る手がかりにもなる。

あらすじ

写生文が世間に認められるようになったが、特色は誰も明瞭に説いていないと、漱石は断って、作者の心的状態から説明する。写生文家の人事に対する態度は、貴人が賤者を、賢者が愚者を見る態度ではなく、大人が小供を見る態度である。小供が泣くたびに泣く親は気違であり、普通の小説家は人と同程度に泣きながら書くが、写生文家は泣かずに泣く人を描く。だが人情がないのではなく、傍から見て気の毒に思う裏に微笑を含む同情を持つ。そのため深刻さは出にくく、滑稽味が出る。文章にはゆとりがあり、客観的になる。筋のない作も多く、進水式をかけばその雑然を雑然と並べるだけだが、それは筋を第一に考える小説家とは相容れない。この態度は俳句から生まれたもので、西洋の傑作にはほとんど見当たらない。ただしこれは唯一でも最上でもなく、作家は状況に応じて立場を変えねばならない、と結ぶ。

冒頭部(原文より)

 写生文の存在は近頃ようやく世間から認められたようであるが、写生文の特色についてはまだ誰も明暸に説破したものがおらん。元来存在を認めらるると云う事はすでに認められるだけの特色を有していると云う意味に過ぎんのだから、存在を認められる以上は特色も認められた訳に相違ない。

「写生文」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

 余は先に「作物の批評」と題する一篇を草して批評すべき条項の複雑なる由を説明した。この篇は写生文を品評するに当ってその条項の一となるべき者を指摘してわが所論の応用を試みたものである。

「写生文」夏目漱石(青空文庫)

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