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別離(中原中也)のあらすじ・登場人物

さよなら、さよなら!

中原中也 1934年(昭和9年)11月

文字数
1,084字
読了目安
約2分
表記
新字旧仮名

この作品について

「さよなら、さよなら!」の呼びかけが繰り返される、中原中也の五章からなる別れの詩。世話になった家を去る日の挨拶が、いつしか取り返しのつかない喪失の歌へと変わってゆく。「(そんなこと、考へるの馬鹿)」「(霙とおんなじことですよ)」という括弧のつぶやきが、感傷を突き放しながらいっそう哀切さを増す。

あらすじ

「さよなら、さよなら!/ いろいろお世話になりました」——第一章は、世話になった家を去る日の挨拶として始まる。こんなに良いお天気の日にお別れしてゆくのかと思うとほんとに辛い。明日の今頃は、長の年月見馴れた故郷の土を見ているのだ。「あなたはそんなにパラソルを振る/僕にはあんまり眩しいのです」。第二章では、午睡の夢から覚めたらみなが家を空けていた、あの日のことがくり返し思い出される。日向ぼっこをしながら爪を摘んだこと、芝庭、栗を食べたこと、干された飯櫃、裏山で呑気に啼いていた烏——「僕はなんでも思ひ出します」。だが、わけても思い出すことは、「いいえ、もうもう云へません」と口をつぐんでしまう。第三章では、忘れがたない虹と花が、その手、その唇とともにいつかは消えてゆくと歌われ、「(霙とおんなじことですよ)」と自ら茶化す。第四章は突然の飢えの訴え——「何か、僕に、食べさして下さい」。だが野道に食物はありはしない。第五章、向こうに水車の見える苔むした小屋のかたわらで、「ではもう、此処からお帰りなさい」と別れを告げ、「僕は一人で、行けます、行けます」と言う。文明人らしく他の話もできたはずなのに、やっぱりできませんでした——そう繰り返して詩は閉じられる。

冒頭部(原文より)

さよなら、さよなら!   いろいろお世話になりました   いろいろお世話になりましたねえ   いろいろお世話になりました さよなら、さよなら!   こんなに良いお天気の日に   お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い   こんなに良いお天気の日に

「別離」中原中也(青空文庫)

末尾部(原文より)

向ふに、水車が、見えてゐます、   苔むした、小屋の傍、 ではもう、此処からお帰りなさい、お帰りなさい   僕は一人で、行けます、行けます、 僕は、何を云つてるのでせう   いいえ、僕とて文明人らしく もつと、他の話も、すれば出来た   いいえ、やつぱり、出来ません出来ません。

「別離」中原中也(青空文庫)

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