夏の夜の博覧会は、かなしからずや(中原中也)のあらすじ・登場人物
象の前の坊やと夕空の釦
- 文字数
- 399字
- 読了目安
- 約1分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
中原中也が亡くなる年の暮れ、一九三六年十二月二十四日の日付を持つ詩。幼い息子と妻と三人で出かけた夏の夜の博覧会の情景を、文語まじりの古風な調子で綴る。「かなしからずや」の畳みかけが、幸福な家族の場面にかえって深い哀感を落とす。わが子を失う予感に満ちた晩年の抒情を代表する一篇として知られる。
あらすじ
二章からなる短い詩。第一章は、雨がちょっと降ってやんだ夏の夜の博覧会。女房が買い物をする間、象の前に「僕」と坊やがしゃがんで待ち、やがて三人で博覧会を出て、不忍の池の前に立つ。坊やが眺めた水は、その子の見た「水の中にて最も大なるもの」だった。髪が風に吹かれる坊やを見守りながら、手を引いて広小路へ歩き、兎の玩具を買う。どの行にも「かなしからずや」が添えられる。第二章は、博覧会に入ったばかりの明るい刻へ戻り、三人で回転する飛行機に乗る場面。夕空がめぐり、四方の燈光もめぐる。夕空は紺青、燈光は貝釦の色だった。「その時よ、坊や見てありぬ」と繰り返し、めぐる釦と紺青の空を見つめる坊やの姿で詩は閉じる。
冒頭部(原文より)
1 夏の夜の博覧会は、哀しからずや 雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ 夏の夜の、博覧会は、哀しからずや 女房買物をなす間、 象の前に僕と坊やとはゐぬ、 二人蹲んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ 三人博覧会を出でぬかなしからずや
「夏の夜の博覧会は、かなしからずや」中原中也(青空文庫)
末尾部(原文より)
四囲の燈光また夕空にめぐりぬ 夕空は、紺青の色なりき 燈光は、貝釦の色なりき その時よ、坊や見てありぬ その時よ、めぐる釦を その時よ、坊やみてありぬ その時よ、紺青の空! (一九三六・一二・二四)
「夏の夜の博覧会は、かなしからずや」中原中也(青空文庫)
名文
夏の夜の博覧会は、哀しからずや 雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ 夏の夜の、博覧会は、哀しからずや
中原中也「夏の夜の博覧会は、かなしからずや」(1936年末作)の冒頭。幼い長男文也を亡くした直後、親子三人で出かけた博覧会を回想する。繰り返される「かなしからずや」が、楽しかった夜を哀切に変える。
原文を読む
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