芸術論覚え書(中原中也)のあらすじ・登場人物
名辞の前に感じる手
- 文字数
- 8,653字
- 読了目安
- 約17分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
中原中也が芸術について断片的に書き留めた覚え書。「これが手だ」と名づける前に感じている手、という感覚の優位を説く冒頭をはじめ、箇条書きの短い断章が並ぶ。名辞より先に感じること、生活意識と芸術の相反など、中也の詩論の核を、アフォリズムのような簡潔さで伝える。
あらすじ
一、二行ずつの断章を「一、」で並べる形式。まず「これが手だ」と口にする前に感じている手が深く感じられていればよい、という。名辞が早く頭に浮かぶのは「かせがねばならぬ」という二次的意識で、それは芸術と永遠に交わらないと説く。努力は直接詩人を豊かにしないが、努力すべきでないとも言えず、「かせがねばならぬ」から始まる努力はむしろ害だという。面白いから笑うのであって笑うから面白いのではなく、無限に面白ければ笑う暇はない、という観察も挟まれる。末尾には、伝統から学ぶことを唱えたため伝統主義者と誤解された経験に触れ、自分は伝統から学べるだけ学びたいにすぎないと述べる。
冒頭部(原文より)
一、「これが手だ」と、「手」といふ名辞を口にする前に感じてゐる手、その手が深く感じられてゐればよい。 一、名辞が早く脳裡に浮ぶといふことは尠くも芸術家にとつては不幸だ。名辞が早く浮ぶといふことは、やはり「かせがねばならぬ」といふ、人間の二次的意識に属する。「かせがねばならぬ」といふ意識は芸術と永遠に交らない、つまり互ひに弾き合ふ所のことだ。
「芸術論覚え書」中原中也(青空文庫)
末尾部(原文より)
が、私は伝統主義者であるのでも、ないのでもない。私は伝統から学べる限り学びたいのに過ぎない。 (尤も、右の如き誤解は、当今では珍しいことではない。蓋し熟読といふことはどういふことかも思ひも到らぬ連中といふものは多いものである。)
「芸術論覚え書」中原中也(青空文庫)
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