僕は(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
僕で始まる短い自己観察
- 文字数
- 1,137字
- 読了目安
- 約2分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
芥川龍之介の晩年の箴言集。「僕は」で始まる短い自己観察を十数条並べ、屈辱、軽蔑、自己嫌悪、嘘、自尊心などを書きとめる。冒頭にフランスの作家ジュール・ルナールの「誰でもわたしのやうだらうか?」の一句が置かれ、末尾に大正15年12月4日の日付がある。雑誌「驢馬」に載った。
あらすじ
ルナールの一句を掲げた後、「僕は屈辱を受けた時、なぜか急には不快にはならぬ」に始まる短い条項が、×印で区切って並ぶ。ロダンのウゴリノ伯の写真から男色を思い出したこと、樹木に前後があるように思われること、暴君になって人を獅子や虎に食わせたいと思いながら、血のついたガーゼを見ただけで気分が悪くなること、肉親にまで「死ねば善い」と思ったこと、良心はないが神経は持っていること、自己嫌悪の特色、「こんちは」の語尾のS、いつも何人もの僕が喧嘩していること、医者に容態を正確に話せたことがないこと、見知り越しの人にはこちらからお辞儀をしてしまうことなどが記される。
冒頭部(原文より)
誰でもわたしのやうだらうか?――ジュウル・ルナアル 僕は屈辱を受けた時、なぜか急には不快にはならぬ。が、彼是一時間ほどすると、だんだん不快になるのを常としてゐる。 × 僕はロダンのウゴリノ伯を見た時、――或はウゴリノ伯の写真を見た時、忽ち男色を思ひ出した。 × 僕は樹木を眺める時、何か我々人間のやうに前後ろのあるやうに思はれてならぬ。
「僕は」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
僕は僕の住居を離れるのに従ひ、何か僕の人格も曖昧になるのを感じてゐる。この現象が現れるのは僕の住居を離れること、三十哩前後に始まるらしい。 × 僕の精神的生活は滅多にちやんと歩いたことはない。いつも蚤のやうに跳ねるだけである。 × 僕は見知越しの人に会ふと、必ずこちらからお時宜をしてしまふ。従つて向うの気づかずにゐる時には「損をした」と思ふこともないではない。
「僕は」芥川龍之介(青空文庫)
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