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千曲川のスケッチ(島崎藤村)のあらすじ・登場人物

小諸の四季と人々の写生文

島崎藤村 1911年(明治44年)6月 「中学世界」

文字数
81,655字
読了目安
約2時間43分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 長野県

この作品について

島崎藤村が信州小諸での生活をもとに書いた写生文集。『中学世界』への連載を経て、1912年(大正元年)の冬に序文を付してまとめた。小諸義塾で教える「私」が、若い吉村樹に語りかける形で、学生の家、温泉、農村、千曲川沿いの風景を紹介していく。春の訪れが遅い土地の花の咲き方や、農家の仕事、学校の周囲の暮らしが、実際に歩いて見聞きする順序で文章になる。自然だけを切り離して眺めず、その土地で働き、学ぶ人々とともに描くところに特徴がある。序文で藤村は、自分を新鮮で簡素にしたいと願って山国へ行き、生徒の父兄や学校の小使からも学んだと振り返る。詩から小説へ表現を移していく時期の印象が、この集の土台になったとも説明している。旅人の短い滞在記とは異なる、教師として土地に暮らした人の観察を伝える一冊だ。

あらすじ

詩人として世に出た藤村は、明治三十二年から信州小諸義塾の教師として、千曲川を望む高原の町に暮らした。本書は、その小諸時代の見聞を写生文の形で綴った記録である。浅間山の裾野に広がる畑、りんごの花咲く春、荒々しい冬の風、川霧に沈む朝――めぐりゆく季節のなかで、農夫や馬子、鍛冶屋や学校の生徒たちの素朴な暮らしが、飾らない筆致で写し取られていく。藤村はここで、美辞をつらねる詩の言葉を離れ、事物をありのままに見つめて言文一致の文章をきたえることを自らに課した。教え子や画家仲間と千曲川の上流から下流までを歩いた日々の思い出とともに、後の小説家・島崎藤村を準備した貴重な散文修業の跡がしるされている。

冒頭部(原文より)

敬愛する吉村さん――樹さん――私は今、序にかえて君に宛てた一文をこの書のはじめに記すにつけても、矢張呼び慣れたように君の親しい名を呼びたい。私は多年心掛けて君に呈したいと思っていたその山上生活の記念を漸く今纏めることが出来た。 樹さん、君と私との縁故も深く久しい。私は君の生れない前から君の家にまだ少年の身を托して、君が生れてからは幼い時の君を抱き、君をわが背に乗せて歩きました。

「千曲川のスケッチ」島崎藤村(青空文庫)

末尾部(原文より)

到頭、わたしは七年も山の上で暮した。その間には、小山内薫君、有島生馬君、青木繁君、田山花袋君、それから柳田国男君を馬場裏の家に迎えた日のことも忘れがたい。わたしはよく小諸義塾の鮫島理学士や水彩画家丸山晩霞君と連れ立ち、学校の生徒等と一緒に千曲川の上流から下流の方までも旅行に出掛けた。このスケッチは、いろいろの意味で思い出の多い小諸生活の形見である。

「千曲川のスケッチ」島崎藤村(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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