長江游記(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
上海から廬山へ長江を遡る旅
- 文字数
- 7,438字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
芥川龍之介の紀行。1921(大正10)年に中国を旅した際に長江をさかのぼった体験を、三年後に回想して書いたもので、初出時の題は「長江」。蕪湖での友人西村貞吉との滞在、上海から漢口までの船旅、廬山に登った一日を、辛口の観察と諧謔をまじえて綴る。のちに「支那游記」(1925年)に収められた。
あらすじ
「前置き」で、三年前の旅を炎暑の東京で懐かしんでいると述べる。「蕪湖」では、旧友西村貞吉の社宅に泊まりながら、中国に飽き飽きした私が不機嫌に街を歩き、夜はバルコンで現代中国の悪口を言い募る。「溯江」では、三艘の汽船で長江をさかのぼる船中の人々、丁抹人ルーズの奇談、アメリカ人夫婦との東西の愛をめぐる口論、竹内栖鳳一行との同船などを描く。「廬山」では、気の進まないまま籐椅子の駕籠で山を登り、避暑地クーリンの宿の主人の愛郷心に閉口しながら、思いがけず目の前の景色の良さを感じ、東京に残した子供の顔を思い出す。
冒頭部(原文より)
前置き これは三年前支那に遊び、長江を溯った時の紀行である。こう云う目まぐるしい世の中に、三年前の紀行なぞは誰にも興味を与えないかも知れない。が、人生を行旅とすれば、畢竟あらゆる追憶は数年前の紀行である。私の文章の愛読者諸君は「堀川保吉」に対するように、この「長江」の一篇にもちらりと目をやってくれないであろうか? 私は長江を溯った時、絶えず日本を懐しがっていた。
「長江游記」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
草花の鉢を置いたバルコンも見える。青芝を劃ったテニス・コオトも見える。ハクラクの香炉峰は姑く問わず、兎に角避暑地たるクウリンは一夏を消するのに足る処らしい。私は竹内氏の一行のずんずん先へ行った後も、ぼんやり巻煙草を御えた儘、かすかに人影の透いて見える家々の窓を見下していた、いつか東京に残して来た子供の顔などを思い出しながら。
「長江游記」芥川龍之介(青空文庫)
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