フレップ・トリップ(北原白秋)のあらすじ・登場人物
北の海へ心はずむ旅
- 文字数
- 145,690字
- 読了目安
- 約4時間51分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
北原白秋が1925年(大正14)の夏、樺太(サハリン)を旅した紀行文。雑誌『女性』に1925年12月号から連載された。題は樺太のツンドラ地帯に生える灌木「フレップ」(赤い実)と「トリップ」(黒い実)から。文章の合間に詩や民謡風の歌が挟まれ、北の海と原野を見たい一心で出かけた旅の、明るくはずむ気分が伝わる。
あらすじ
冒頭は「フレップの実は赤く、トリップの実は黒い」と、題の由来を説く一節から始まる。船の右舷の欄干に腕をもたせ、「揺れ揺れ帆綱よ」と口ずさむ作者は、「物の哀れの歌枕」や風狂の旅ではなく、未だ見ぬ北方の景色に身も霊も打ち込みたいのだと語る。旅の終盤には、楡の微笑、火焔菜と燕麦、緬羊と白樺、驟雨、黒とどの原生林、ロシア人の家々、ツンドラ地帯、海豹島の膃肭獣とロッペン鳥などの景が畳みかけられる。結びは「今思うても実に愉快な旅行であった。若かれと私は叫ぶ」。
冒頭部(原文より)
フレップの実は赤く、トリップの実は黒い。いずれも樺太のツンドラ地帯に生ずる小灌木の名である。採りて酒を製する。所謂樺太葡萄酒である。 揺れ揺れ帆綱よ 心は安く、気はかろし、 揺れ揺れ、帆綱よ、空高く…… おそらく心からの微笑が私の満面を揺り耀かしていたことと思う。私は私の背後に太いロップや金具の緩く緩くきしめく音を絶えず感じながら、その船首に近い右舷の欄干にゆったりと両の腕をもたせかけている。
「フレップ・トリップ」北原白秋(青空文庫)
末尾部(原文より)
燦爛たる楡の微笑、火焔菜と燕麦、緬羊と白樺、驟雨、驟雨、驟雨、 黒とどの原生林、 露人の家々、 ツンドラ地帯の極楽園。 ああ、海豹島、三万の膃肭獣と三十万のロッペン鳥。 今思うても実に愉快な旅行であった。 若かれと私は叫ぶ。 若かれ、若かれ、若かれと。
「フレップ・トリップ」北原白秋(青空文庫)
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