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富士に就いて(太宰治)のあらすじ・登場人物

天下茶屋で見る富士

太宰治 1938年(昭和13年)10月 「国民新聞」

文字数
1,088字
読了目安
約2分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

太宰治の短い随筆。1938年(昭和13年)10月6日、「国民新聞」に発表された。甲州の御坂峠の天下茶屋に仕事場を借りた作者が、「天下第一」とされる富士と河口湖の眺めを、風呂屋のペンキ画のようだと拒み、華厳の滝や熔岩の山としての富士に崇高さを見る。のちの「富嶽百景」につながる題材である。

あらすじ

九月十三日から、作者は甲州御坂峠の頂上にある天下茶屋の二階を借りて仕事をしている。茶店の人々は親切だが、遊覧の客が口々に讃嘆する「天下第一」の富士と河口湖の眺めを、作者は風呂屋のペンキ画か芝居の書き割りのようで、あまりに注文どおりだと感じ、拒否している。真の天下第一の風景には驚きが伴うべきだとして華厳の滝を推し、白扇さかしまなどと形容して富士をお座敷芸のように丸めるのが不服だと言う。富士は熔岩の山であり、暁にこぶだらけの山肌があかがね色に光る姿にこそ崇高を感じる、と述べる。最後に、世話になっている茶屋の人たちには読ませたくない文だと添える。

冒頭部(原文より)

甲州の御坂峠の頂上に、天下茶屋という、ささやかな茶店がある。私は、九月の十三日から、この茶店の二階を借りて少しずつ、まずしい仕事をすすめている。

「富士に就いて」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

富士を、白扇さかしまなど形容して、まるでお座敷芸にまるめてしまっているのが、不服なのである。富士は、熔岩の山である。あかつきの富士を見るがいい。こぶだらけの山肌が朝日を受けて、あかがね色に光っている。私は、かえって、そのような富士の姿に、崇高を覚え、天下第一を感ずる。茶店で羊羹食いながら、白扇さかしまなど、気の毒に思うのである。なお、この一文、茶屋の人たちには、読ませたくないものだ。私が、ずいぶん親切に、世話を受けているのだから。

「富士に就いて」太宰治(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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