現代日本の開化(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
日本の開化は皮相上滑りと説く講演
- 文字数
- 18,455字
- 読了目安
- 約37分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 和歌山県
この作品について
夏目漱石が1911年(明治44年)、和歌山で行った有名な講演の記録。西洋の開化が内側から自然に発展した「内発的」なものであるのに対し、日本の近代化は外圧によって否応なく進む「外発的」なものであり、「皮相上滑りの開化」だと喝破した、鋭い文明批評である。
あらすじ
1911年(明治44年)8月、夏目漱石は和歌山で「現代日本の開化」と題する講演を行った。ユーモラスな前置きから説き起こした漱石は、まず「開化」とは何かを定義しようと試みる。開化とは、人間の活力が「なるべく労力を節約したい」という方向と「なるべく気ままに勢力を消耗したい」という方向へ発展していく現象だ、と。そして漱石は、核心の主張へと進む。西洋の開化が、内部の欲求から自然にひと波ずつ発展していく「内発的」なものであるのに対し、日本の近代化は、鎖国を解かれて以来、外国の圧力によって否応なく進む「外発的」なものである、と。西洋が百年かけた開化を、日本はわずか数十年で駆け抜けねばならず、その結果は「上滑り」となり、無理に踏張れば「神経衰弱」に陥る——。「現代日本の開化は皮相上滑りの開化である」。名案も救いも示さず、ただ「涙を呑んで上滑りに滑って行かなければならない」と結ぶ、悲観的でありながら誠実きわまる、漱石の文明批評の代表的講演である。
冒頭部(原文より)
その題目は「現代日本の開化」と云うので、現代と云う字は下へ持って来ても上へ持って来ても同じ事で、「現代日本の開化」でも「日本現代の開化」でも大して私の方では構いません。(……)まず開化の定義からきめてかかりたいのです。
「現代日本の開化」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
これを一言にして云えば現代日本の開化は皮相上滑りの開化であると云う事に帰着するのである。(……)しかしそれが悪いからお止しなさいと云うのではない。事実やむをえない、涙を呑んで上滑りに滑って行かなければならないと云うのです。(……)どうすることもできない、実に困ったと嘆息するだけで極めて悲観的の結論であります。
「現代日本の開化」夏目漱石(青空文庫)
名文
西洋の開化(すなわち一般の開化)は内発的であって、日本の現代の開化は外発的である。
和歌山で行われた講演の中心となる対比。内から自然に開く西洋の開化と、外からの力で形を取らされた日本の開化とを分けて論じる。
これを一言にして云えば現代日本の開化は皮相上滑りの開化であると云う事に帰着するのである。
講演の結論として広く引かれる一文。急速な近代化を「上滑り」と言い切りながら、それをやめよとは言わず、避けられない現実として見据える。
原文を読む
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