軍艦金剛航海記(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
初夏の海を行く軍艦同乗記
- 文字数
- 6,594字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
芥川龍之介の紀行。初出は未詳。初夏、軍艦「金剛」に乗り組んだ体験を、乗艦の様子、士官室の食事、艦橋からの眺めなど、五つの章に分けて描く。若い機関少尉たちとのやりとりや、艦内の見聞を軽い筆致で書き、豊後水道から瀬戸内海へ入る朝の海と、砲身にとまった一匹の蝶で閉じられる。
あらすじ
五章からなる。第一章では、出航前の上甲板で若い機関少尉たちの雑談を聞き、夕飯の合図が思ったより貧弱な金盥の音だったことに失望し、士官室で見たシイメン(海軍の軍人)の顔に一種の型を発見する。第二章以降は、前部艦橋から艦首と艦尾を見渡す眺め、鎖鎌を使うように分銅を投げる水兵の姿、艦内の様子や乗組員との会話が続く。終わりには、艦が豊後水道から瀬戸内海へ入った朝の、緑青色に変わった海と靄の中の山の形を書く。機関長と法華経の話をしていたとき、十四吋砲の砲身に黄色い蝶がとまっているのを見て、陸や人間や町を懐かしく思ったことを記して結ぶ。
冒頭部(原文より)
一 暑いフロックを夏の背廣に着換へて外の連中と一しよに上甲板へ出てゐると、年の若い機關少尉が三人やつて來て、いろんな話をしてくれた。僕は新米だから三人とも初對面だが、外の連中は皆、教室で一度は講義を聞かせた事のある間柄である。だから、僕は圈外に立つておとなしく諸君子の話を聞いてゐた。すると其少尉の一人が横須賀でSとSの細君と二人で散歩してゐるのに遇つたら、よくよく中てられたと見えて、其晩から腹が下つたと云ふ話をした。
「軍艦金剛航海記」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
僕は文字通りはつと思つた。驚いたやうな、嬉しいやうな妙な心もちではつと思つた。が、それが人に通じる筈はない。機關長は相變らずしきりにむづかしい經義の話をした。僕は――唯だ、蝶を見てゐたと云つたのでは、云ひ足りない。陸を、畠を、人間を、町を、さうして又それらの上にある初夏を蝶と共に懷しく、思ひやつてゐたのである。
「軍艦金剛航海記」芥川龍之介(青空文庫)
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