博士問題とマードック先生と余(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
学位辞退と旧師の手紙
- 文字数
- 4,887字
- 読了目安
- 約10分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
1911年、文部省からの文学博士の授与を辞退した漱石が、その件で届いた旧師の手紙をきっかけに書いた随筆。『東京朝日新聞』に三回に分けて載った。かつて学んだマードック先生の風変わりな人柄と思い出、手紙の内容、先生の著作『日本歴史』への姿勢を紹介し、学位辞退の経緯を背景に学者としての良心を語る。
あらすじ
上では、博士に推薦され、辞退した手紙も新聞に載って、人々からさまざまな手紙が届いたことを語る。そのなかで、二十年前に別れたままのマードック先生から突然届いた封書だけが驚きだったと言う。中では、先生の風変わりな人柄を回想する。鼠色のフラネルに風呂敷のような襟飾、袖口の黄色い紐で机を叩く癖、朝食のフライを食べながらギリシャ語の詩を朗読して「英語ですか」と聞かれ笑った逸話、ベインの論理学を貸してくれたことなどである。下では、手紙の内容を紹介する。学位辞退を喜び、「モラル・バックボーン」の証拠だと言う先生の言葉に漱石は恐縮する。先生は流俗以上に傑出しようと努めるのは当然だが、栄誉はそれぞれの仕事によって決まるべきだと述べる。さらに自分が十年を費やして書いた『日本歴史』について触れ、読んで世に紹介してほしいと漱石に頼む。漱石は先生の人となりを信じ、手紙の一節をそのまま訳して紹介する。
冒頭部(原文より)
余が博士に推薦されたという報知が新聞紙上で世間に伝えられたとき、余を知る人のうちの或者は特に書を寄せて余の栄選を祝した。余が博士を辞退した手紙が同じく新聞紙上で発表されたときもまた余は故旧新知もしくは未知の或ものからわざわざ賛成同情の意義に富んだ書状を幾通も受取った。
「博士問題とマードック先生と余」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
先生の意は、学位を辞退した人間としての夏目なにがしに自分の著述を読んでもらって、同じく博士を辞退した人間としての夏目なにがしに、その著述を天下に紹介してもらいたいという所にあるのだろうと思うからである。
「博士問題とマードック先生と余」夏目漱石(青空文庫)
原文を読む
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