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花田清輝論(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

埋もれた才人への賛辞

坂口安吾 1947年(昭和22年)1月 「新小説」

文字数
1,405字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名

この作品について

1947年(昭和22年)1月、「新小説」に載った坂口安吾の短い評論。当時ほとんど知られていなかった花田清輝を、同人誌「現代文学」で顔を合わせた仲間の文脈から紹介し、評論集「復興期の精神」の著者として称賛する。安吾は花田を、評論家の側の太宰治のようなダンディで才人だとたとえ、思想がその生き方に裏づけられていると評価した。戦後の安吾の評論家観がうかがえる。

あらすじ

花田清輝の名を読者は知らない。新人発掘が商売の編集者も、戦争に行っていて、花田が書いていた頃のことを知らないからだ。安吾自身も雑誌をほとんど読まないが、戦争中に「現代文学」に加わり、平野謙、佐々木基一、荒正人、本多秋五らを知った。福田恆存の原稿に自分が叩かれても腹は立たなかった、尊敬する人としか争わないからだ、と述べる。花田は同人ではないが時々書いて立派な仕事をした。小説家の太宰治のような才人で、ダンディな評論家であり、ポーの「ユウレカ」のように大方の読者には分かりにくい。今度出した「復興期の精神」は類の少ない名著だが、読者は花田の幻想だけを見て誠実な生き方を見落とすだろう。戦争中に右翼の暴力団に襲われた体験を書いた文章は抱腹絶倒の名文だった。日本が世界の中の日本になるのに、花田のような人が埋もれていてはならない、と結ぶ。

冒頭部(原文より)

 花田清輝の名は読者は知らないに相違ない。なぜなら、新人発掘が商売の編輯者諸君の大部分が知らなかったからである。知らないのは無理がないので、花田清輝が物を書いていた頃は彼等はみんな戦争に行っていたのだから。  私は雑誌はめったに読まない性分だから、新人などに就て何も知らず差出口のできないのが当然なのだが、戦争中「現代文学」という同人雑誌に加わっていたので、平野謙、佐々木基一、荒正人、本多秋五などという評論家を知っていた。

「花田清輝論」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 花田清輝はこの連中の作品に遠慮なく批評を加えて、襲撃されて、ノビたのである。このノビた記録を「現代文学」へ書いたものは抱腹絶倒の名文章で、たとえばKなどという評論家が影山に叱られてペコペコと言訳の文章を「文学界」だかに書いていたのに比べると、先ず第一に思想自体を生きている作家精神の位が違う。その次に教養が高すぎ、又その上に困ったことに、文章が巧ますぎる。つまり俗に通じる世界が稀薄なのである。  だが、これからは日本も変る。ケチな日本精神でなしに、世界の中の日本に生れ育つには、花田清輝などが埋もれているようでは話にならない。

「花田清輝論」坂口安吾(青空文庫)

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