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僻見(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

好悪を隠さず斬る三人の肖像

芥川龍之介 1924年(大正13年)3月 「女性改造」

文字数
18,854字
読了目安
約38分
表記
新字旧仮名

この作品について

芥川龍之介の評論。「女性改造」1924(大正13)年3月から9月にかけて、斎藤茂吉、岩見重太郎、木村巽斎の三人を取り上げて連載された。冒頭の「広告」は、これらの文章が公平を誇るものではなく、自分の好悪を正直に示すものだと断る。歌人茂吉への傾倒の理由を語り、豪傑岩見重太郎を愛する民衆の心を論じ、文人木村巽斎(蒹葭堂)の中庸の人柄を描く。

あらすじ

「広告」で、これらの文章は公平も謙譲も目指さず、ただ自分の好悪を正直に述べたものだと断る。「斎藤茂吉」では、高校時代に歌集「赤光」を読み、詩歌に目を開かれた経験を語り、なぜ当時の自分が茂吉を好んだのかを多くの理由を挙げて述べる。「岩見重太郎」では、伝説の豪傑が、善悪の彼岸に立つ強さによって人々に愛されるのだと論じ、牢破りや狒退治に人間と神の法を蹂躙する象徴を見る。「木村巽斎」では、倹素を守って文雅に遊んだ文人の節制を、自筆の記録を引きながら描き、蒹葭堂主人の生涯を、春山図の寂しい山道を一人驢馬で行く姿になぞらえる。

冒頭部(原文より)

広告  この数篇の文章は何人かの人々を論じたものである。いや、それらの人々に対する僕の好悪を示したものである。  この数篇の文章の中に千古の鉄案を求めるのは勿論甚だ危険である。僕は少しも僕の批判の公平を誇らうとは思つてゐない。実際又公平なるものは生憎僕には恵まれてゐない、――と云ふよりも寧ろ恵まれることを潔しとしない美徳である。  この数篇の文章の中に謙譲の精神を求めるのはやはり甚だしい見当違ひである。

「僻見」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

天才と世に呼ばれるものはそれ等の峰々へ攀づることを辞せない勇往果敢の孤客である。百年の雪を踏破することは勿論千古の大業であらう。が、崕花の発したのを見、澗水の鳴るのを聞きながら、雲と共に徂来するのもやはり一生の快事である。僕の愛する蒹葭堂主人はこの寂寞たる春山に唯一人驢馬を歩ませて行つた。春山図の逸趣に富んでゐるのも素より怪しむに足りないかも知れない。…………

「僻見」芥川龍之介(青空文庫)

名文

僕の詩歌に対する眼は誰のお世話になつたのでもない。斎藤茂吉にあけて貰つたのである。

「斎藤茂吉」の章の一節。歌集『赤光』を読んで詩歌に目を開かれたと語る、茂吉への敬意を率直に示した言葉。

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