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光を覆うものなし――競輪不正事件――(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

競輪の不正を告発した記録

坂口安吾 1951年(昭和26年)11月 「新潮」

文字数
12,115字
読了目安
約24分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

競輪の決勝写真に不正があるとして、坂口安吾が静岡県の伊東競輪を告発したあとに書いた文章。告発後に新聞へ出た「写真に修正の跡はない」という記事の言い回しを取りあげ、一見公的に見えるその発表が競輪の振興会側の狙い通りに働いていると批判する。小説家が巷の不正を追及する渦中の記録であり、「光を覆うものなし」の題どおり、からくりは必ず暴かれるという気概が全体に通っている。

あらすじ

告発を検察庁に任せた安吾は、結果が出るまで発言を控えるつもりだった。ところが十月二日の朝日と毎日の朝刊に、証拠写真を鑑識したところ修正の跡はなく、沼津地検が安吾から再び事情を聴くという記事が出る。安吾の側が確かめると、地検はそのような発表をしていなかった。前日には振興会がネガを東京へ持ち込み、記者団に「本物のネガ」と判定させていたが、比較する写真がなければ本物と見えるのは当然である。安吾自身は、一着二着のユニフォームの色と番号を直した写真だろうと推定していたが、写真に疎い自分の見込み違いで、細工は別の方法でなされていた。新聞の記事は「修正の事実はない」と述べているだけで「写真が本物だ」とは述べていないのに、読む人には不正が否定されたと受け取られる。しかも伊東競輪の再開の第一日に出ており、ファンを安心させて競輪を続けさせる役に立つ。安吾は、これを「より悪質、より計画的」な策と見て、告発の事実そのものは検察庁に委ね、不時のからくりに対してだけ文章で応じると断り、一矢を報いるために筆を執ったと結ぶ。

冒頭部(原文より)

 私はこの事件を告発して、いったん検察庁にまかせたのだから、検察庁の調査が完了して公式の発表が行われるまで、私自身の発言は差し控えるツモリであった。

「光を覆うものなし――競輪不正事件――」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 しかし、私は文章の終りに当って改めて言明するが、私はすでに告発して検察庁に全てをゆだねたものである。  ただ十月二日の新聞記事に伏せられた彼らのカラクリが複雑巧妙をきわめて、放置すれば、彼らが世人をマンチャクする策を成功せしめ、益々彼らの不正を大ならしめ、逆にファンを去勢せしめるに至るのみであること明かであるから、一矢むくいざるを得なかったものである。あいにく、これを発表する雑誌が発行部数の多大な大衆性のある雑誌と異り、多数世人の目にふれぬ怖れが甚だ多いから、この文章のほかにも同様趣旨のものを他に発表せざるを得ないかとも考えている。  しかし、いずれにしても、今回私が発表する文章は全てこれだけの程度の内容で、告発の事実そのものの証明とは無関係なことである。告発した事実については、検察庁の取調べに一任し、他は随時、かかる不時のカラクリに対し、術策に対してのみ、文章によって応じるだけのことである。至急を要したため文章上の難渋なところは我慢していただきたく存じます。

「光を覆うものなし――競輪不正事件――」坂口安吾(青空文庫)

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