一問一答(太宰治)のあらすじ・登場人物
正直と愛を語る短い問答
- 文字数
- 1,164字
- 読了目安
- 約2分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
太宰治が1942(昭和17)年4月に『芸術新聞』に寄せた、短い問答体の文章。記者の質問に答える形で、正直であることと愛についての考え、若い頃の作品を読み返す気持ち、聖書への思い、絵画の展覧会への感想を語る。
あらすじ
記者の問いに、語り手が一つずつ答える形で進む。最近の感想を問われて、人間は正直でなければならないと答え、ごまかそうとするから生活がややこしくなる、失敗とはごまかし切れなかった場合のことだと言う。無欲も大事で、これだけのことを体得するのに三十四年かかったという。若い頃の作品は、古いアルバムを開くようなもので、人間は変わっていないが服装が違うと感じる。主義を問われると、生活ではいつも愛を考えるが、愛するとはどういうことかまだわからず、正直は現実の問題、愛は理想だと答える。教会へは行かないが聖書は読み、日本人はキリスト教を正しく理解できる人種ではないかとも言う。展覧会の季節に何を見たかと問われて、絵を楽しんでかく人が少ないと述べ、威張ったことばかり言ってすみませんでしたと詫びて終わる。
冒頭部(原文より)
「何か、最近の、御感想を聞かせて下さい。」 「困りました。」 「困りましたでは、私のほうで困ります。何か、聞かせて下さい。」 「人間は、正直でなければならない、と最近つくづく感じます。おろかな感想ですが、きのうも道を歩きながら、つくづくそれを感じました。ごまかそうとするから、生活がむずかしく、ややこしくなるのです。正直に言い、正直に進んで行くと、生活は実に簡単になります。失敗という事が無いのです。失敗というのは、ごまかそうとして、ごまかし切れなかった場合の事を言うのです。それから、無慾ということも大事ですね。
「一問一答」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「そろそろ展覧会の季節になりましたが、何か、ごらんになりましたか。」 「まだどこの展覧会も見ていませんが、このごろ、画をたのしんでかいている人が実に少い。すこしも、よろこびが無い。生命力が貧弱です。 ばかに、威張ったような事ばかり言って、すみませんでした。」
「一問一答」太宰治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。