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幾度目かの最期(久坂葉子)のあらすじ・登場人物

大晦日の未明に綴った告白

久坂葉子 1953年(昭和28年)3月 「VIKING」

文字数
36,592字
読了目安
約1時間13分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 兵庫県
  • 大阪府

この作品について

1952年(昭和27年)十二月二十八日から大晦日の未明にかけて書き継がれ、書き終えたその日に作者が阪急六甲駅で命を絶った遺稿。「熊野の小母さん」という年上の知人への手紙の形をとりながら、三人の男性への愛と罪悪感、家庭への嫌悪、そして書けなくなった苦しみが、推敲も読み返しもされないまま綴られる。「これは小説ではない。ぜんぶ本当」と本人が言い切った、久坂葉子最後の仕事。

あらすじ

十二月二十八日の夜、囲炉裏に火をたき湯たんぽを足に入れて、「私」は殺風景な原稿用紙に書きはじめる。これは富士正晴氏の手に渡り、同人誌に印刷され、やがてあなたの手許に届くだろう——そう断ったうえで、二十一歳の書き手は自らの数か月を順序も定めずに吐き出してゆく。

三月に薬を飲んで死にそこない、生き返って肺病になった。そのとき愛していた妻子ある男を「緑の島」と呼ぶ。療養中に見舞いに来てくれた男を「鉄路のほとり」と呼び、いまはこの人を愛しきっている。そして、互いに惚れないことを条件に拇印つきの契約書まで交わした婚約者を「青白き大佐」と呼ぶ。三人が心のなかをメリーゴーランドのように回り、そのたびに「私」は自分のみにくさに唾を吐きかける。

自作の芝居の上演、徹夜の舞台稽古、行き違い、速達、電報。黒部で死のうと決めた日には「僕と結婚してくれますか」という言葉をもらい、死ねなくなったと思う。だが有名な父と、その七光りに苦しむ兄と、何も知らない母のいる家に一歩入れば、また重い石が頭に載せられる。最後の手紙を投函し、十時までに返事は来ず、その後も来ない。「もうおしまい。はっきりおしまい」——大晦日の午前二時、書き手はペンをおく。

登場人物

冒頭部(原文より)

 熊野の小母さんへ。  あなたには、四五年も昔から、よくお便りしてます。けれど、こんな殺風景な紙に、宿命的な味気ない字を書くことは、はじめてです。いつも、信州の紙とか、色のついたアート紙に、或いはかすれた筆文字で、或いは、もっと、面白くきれいな字――いやこれは、おこがましいかな。でも、あなたは、私の字を好んでくれました。

「幾度目かの最期」久坂葉子(青空文庫)

末尾部(原文より)

 小母様。私は静かな気持になれました。書いてしまった。すっかり。何という罪深い女。私は地獄行きですね。  小母様、お体をうんと大切にして下さい。花がいけてある御部屋。なつかしい御部屋です。 十二月三十一日 午前二時頃

「幾度目かの最期」久坂葉子(青空文庫)

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