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ドミノのお告げ(久坂葉子)のあらすじ・登場人物

牌が告げる、破滅への傾き

  • 心理
  • 家族

久坂葉子 1950年(昭和25年)4月 「VIKING」

文字数
20,714字
読了目安
約41分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 兵庫県

この作品について

1950年(昭和25年)、同人誌「VIKING」に発表された久坂葉子の初期作品。名家に生まれ、二十一歳で自ら命を絶った作家が、まだ十代の終わりに書いた一編である。持病の喘息に喘ぐ父、夜ごと行をおこなう母、そして賭けの世界に身を躍らせる信二郎——崩れゆく家のなかで、「私」だけがドミノの牌に自らの運命を読もうとする。神経のふるえるような文章に、この作家の短い生涯を貫いた破滅への傾斜がすでに刻まれている。

あらすじ

足音をしのばせて帰宅した「私」は、いそいで洋服を着替え、父の寝ている部屋の襖をあける。うすぐらいスタンドの明かりのそばで、父は持病の喘息に喘いでいる。じめじめした日には必ず起こるのだ。秋だというのに、その年はからりと晴れた日が一日もなく、陰気で、うすら寒く、肌に何かねばりつくような日がつづいていた。父は黙って「私」の顔を見つめるばかりで、その眼つきに馴れてはいても、やはり恐れ入る気持ちになって、丁寧に頭をさげ、ぎごちなく後ずさりして部屋を出る。家のなかは息苦しい。母は夜ごと仏間にこもって行をおこない、獣の叫びのような声をあげる。そんな家に出入りする信二郎は、賭けと享楽に身を投じている男である。「私」は彼に近づき、離れ、また引き寄せられる。ドミノの牌を並べて運命を占いながら、「私」は思う——果敢な賭けの世界に身を躍らせるとき、白い閃光のようなものが脳裡を過ぎ、信二郎のなかの同じ閃光と空中で感応して紫色の火華をあげる。そのときにだけ自分は彼を理解し、いのちを燃やしていることを感じるのだ、と。

登場人物

冒頭部(原文より)

 或る日。――  足音をしのばせて私は玄関から自分の居間にはいり、いそいで洋服をきかえると父の寝ている部屋の襖をあけました。うすぐらいスタンドのあかりを枕許によせつけて、父はそこで喘いでおります。持病の喘息が、今日のような、じめじめした日には必ずおこるのです。

「ドミノのお告げ」久坂葉子(青空文庫)

末尾部(原文より)

 私は叫びました。時間の流れが停ったように思われます。果敢な賭けの世界に身を躍らせてゆくときの、白い閃光のようなものが脳裡を縫って過ぎます。信二郎の中にも同じ閃光があって、それが瞬間空中で感応し合い紫色の火華をあげるように思われます。そして。ああ、このときにだけ、私は信二郎を理解し、私はいのちを燃やしていることを自分で感ずることが出来るのです。このときにだけ――。  その時突然、獣の叫びのような奇怪な叫び声が仏間の方で起ります。  母が夜の行をはじめているのです。

「ドミノのお告げ」久坂葉子(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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