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おれの女房(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

がみがみが聞こえる朝

  • 家族
  • 心理

山本周五郎 1949年(昭和24年)11月 「講談雑誌」

文字数
23,303字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

「またよけえなことをする、よしと呉れよ」——長屋の朝は、絵師・平野又五郎の家から聞こえる女房の甲だかい叱り声で始まる。がみがみと口やかましい妻と、貧乏を重ねる絵師。その関係を長屋の住人たちが温かく見守るなかで、事は思わぬ方へ転がってゆく。山本周五郎らしい人情譚。

あらすじ

その長屋の朝は、絵師・平野又五郎の家から聞こえる叫び声で始まる。「またよけえなことをする、よしと呉れよ、そんなところでどうするのさ」——甲だかい調子の、すばらしくなめらかな早口である。それを合図にあちらでもこちらでも物音が聞こえだし、「おまえさんお起きな、先生のところで始まったよ」と長屋じゅうが目を覚ます。……差配の五兵衛は、お勝という妻と二人ぐらしで筆墨紙硯を売っているが、それは隠居の小遣い稼ぎで、神田の紙問屋をしている息子から月々のものを貢がれているらしい。少し口がうるさく、相手構わず発句をすすめ将棋をいどむのには閉口するが、かげでは困っている者の面倒をよくみる人物である。又五郎も店賃を滞らせ、こまごました借りもあるが、五兵衛はいちどもいやな顔をしたことがない。「人間なにをするにも本当の苦労を知らなけりゃあ良い仕事はできませんや」と励ましさえする。やがて又五郎の身に変事が起こる。狩野の麒麟児といわれ、新しい画道の先導者として世人の注目をあびた男が、あの神経ではこれ以上堪えられなかったのかもしれない——そう噂する者もあったが、五兵衛だけは「平野先生はきっと帰っていらっしゃる」と言い、家に手をつけずに何年でも待つと言い切る。物語の結び、帰ってきた女房を抱えて立たせた又五郎は、むりに明るく笑って言う。「さあ、あっちへゆこう、……そして久しぶりに、――景気よくがみがみぱりぱりやって貰おう」。

登場人物

冒頭部(原文より)

一 「またよけえなことをする、よしと呉れよ、そんなところでどうするのさ、そんなとこ男がいじるもんじゃないよ、だめだったら聞えないのかね、あたしがせっかく片づけたのにめちゃくちゃになっちまうじゃないか」  その長屋の朝は、こういう叫び声で始まる。

「おれの女房」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「なんにも云うな、おれはこれからも貧乏はしなきゃあならないだろう、おれのために貧乏して貰えるのはおれにとってはおまえひとりだ――よく帰って来て呉れた、お石」  お石はまた激しく泣きだし、泣きながら又五郎の手に縋りついた。

「おれの女房」山本周五郎(青空文庫)

原文を読む

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