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泉先生と私(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物

泉鏡花を悼む谷崎の追想

谷崎潤一郎 1939年(昭和14年)10月 「文藝春秋」

文字数
1,922字
読了目安
約4分
表記
新字旧仮名
種別
随筆

この作品について

泉鏡花の訃報に接した谷崎潤一郎が、追悼のために急ぎ綴った随筆。娘の結婚で鏡花夫妻に媒酌を頼んだ思い出、明治四十四年の新年宴会で徳田秋声に引き合わされた初対面の酔態、告別式での再会と、親しい交わりの場面が静かに描かれる。

あらすじ

谷崎潤一郎が泉鏡花の死去に際して書いた追悼文。谷崎は、この春に自分の娘が結婚するとき、鏡花が初めての仲人を引き受け、結納から式の当日まで親身に世話を焼いてくれたことを語り、式で鏡花夫妻が並んで椅子に掛けていた紋服姿を忘れがたい面影として記す。続いて、初めて鏡花に会った明治四十四年の正月、読売新聞主催の新年宴会の場面を、自作『青春物語』から引く。徳田秋声に「泉君、いい人を紹介してやろう、これが谷崎君だよ」と呼び止められた鏡花は、すっかり酔っていて、名刺を受け取ったまま仰け反ってしまったという。そして九月十日の青松寺の告別式でも、谷崎はまた秋声の隣に立ち、秋声が参列者を一人ずつ小声で教えてくれたことを書く。自分より年上の秋声が元気なのに、六十七歳で亡くなった鏡花が惜しまれ、子のないまま残された夫人を思いやる。芸術家としての鏡花については言いたいことが多いが、締切に間に合わせるためここまでにして、お悔みを申し上げると結ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

私事にわたることを云ふのは寔に恐縮であるが、泉先生は文壇に於ける大先輩であるのみならず、此の春私の娘が結婚するときに媒酌の労を取つて下すつたので、さう云ふ私交上でも一方ならぬ御厄介になつた。式の当日、先生が奥さんとお二人で並んで椅子に腰かけてをられた紋服のお姿が、今の私には最も感銘の深い、忘れられない面影として記憶されてゐる。

「泉先生と私」谷崎潤一郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

人、及び藝術家としての先生については、云ひたいことが数限りなくあるが、突然のことなので、今はその用意も時間もない。漸く締切に間に合せるために、これだけのことを書いて、謹んでお悔み申し上げる。

「泉先生と私」谷崎潤一郎(青空文庫)

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