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イズムの功過(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

「イズム」の功と過を論じた評論

夏目漱石 1910年(明治43年)7月 「東京朝日新聞」

文字数
1,571字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名

この作品について

夏目漱石が新聞に寄せた短い評論。あらゆる「イズム(主義)」とは、無数の事実を几帳面に束ねて頭の抽出に整理したもの——過去を総括する「輪廓」にすぎないと説き、それに縛られて生きることの不自由を鋭く指摘する。当時隆盛だった自然主義への批評も込められた一文である。

あらすじ

「大抵のイズムとか主義とかいうものは無数の事実を几帳面な男が束にして頭の抽出へ入れやすいように拵えてくれたものである」——漱石はそう論じ始める。イズムとは、実生活の行為を支配する指南車ではなく、知識欲を満たすための「統一函」であり、「文章ではなくって字引」だ。それは過去の事実を総括した「輪廓」であり、中味のない「型」にすぎない。この型をもって未来に臨むことは、天の展開する未来を、あらかじめ人の頭で拵えた器に盛ろうとするようなもの——精神の生活において一つのイズムに支配されるとき、人は「与えられたる輪廓のために生存する」屈辱を感じる、と漱石は言う。そして当時隆盛だった自然主義に触れ、それもまた西洋の歴史の断面を「輪廓にして舶載した品物」にすぎないと批評する。イズムの功と過を、明晰な論理で見きわめた、漱石の鋭い評論である。

冒頭部(原文より)

 大抵のイズムとか主義とかいうものは無数の事実を几帳面な男が束にして頭の抽出へ入れやすいように拵えてくれたものである。一纏めにきちりと片付いている代りには、出すのが臆劫になったり、解くのに手数がかかったりするので、いざという場合には間に合わない事が多い。

「イズムの功過」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

 一般の世間は自然主義を嫌っている。自然主義者はこれを永久の真理の如くにいいなして吾人生活の全面に渉って強いんとしつつある。(……)茫漠たる輪廓中の一小片を堅固に把持して、其処に自然主義の恒久を認識してもらう方が彼らのために得策ではなかろうかと思う。

「イズムの功過」夏目漱石(青空文庫)

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