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自作を語る(太宰治)のあらすじ・登場人物

語れば作者の負けである

太宰治 1940年(昭和15年) 「文章」

文字数
1,825字
読了目安
約4分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

「自作を説明するという事は、既に作者の敗北である」——創作集「女の決闘」の刊行を機に自作について書けと求められた太宰が、その依頼への抵抗をそのまま一篇にした短い随筆。遅筆であること、創作集が二千五百部しか売れないこと、自作をほめる人の前では矮小になり悪罵を投げる人は例外なく軽蔑すること。照れと自負と自己嫌悪が入りまじった筆致の末に、山岸外史と亀井勝一郎からの手紙を引いて「この二人に、わかってもらったら、もうそれでよい」と結ぶ。

あらすじ

私は今日まで自作について語ったことが一度もない、いやなのである——太宰はそう書き出す。読者が読んでわからなければそれまでの話で、「いや、面白い筈だが」という抗弁が成り立つはずもない。苦心談で人を圧倒してお義理の喝采を得ようとは思わない。芸術はそんなに人に強いるものではない。一日三十枚を平気で書く作家もいるというが、自分は五枚書けば大威張りで、描写が下手だから苦労し、語彙が貧弱だからペンが渋り、一枚書くのに二、三度は辞林を引いている。……「自作を語れ」と言われるとどうしてこんなに怒るのだろうと自問しつつ、太宰は、いま考えていることを率直に述べたら人はたちまち自分を狂人あつかいにするだろうから沈黙していなければならぬ、と書く。流行はしたくないし、するわけもない。一年一冊の創作集で三千部売れてくれ、と願う。今度、河出書房から近作を集めた「女の決闘」が出版された。連載中は読者を退屈がらせた様子で、まとめて一本にしたのを機会に感想を書けというのが編輯者・辻森氏の言いつけだが、いま自分には感想は何もなく、次の製作に夢中である。ただ、友人の山岸外史と亀井勝一郎から届いた「走れメロス」を讃える手紙だけを引いて、この二人にわかってもらえればもうそれでよいという。「自作を語るなんてことは、老大家になってからする事だ」。

冒頭部(原文より)

 私は今日まで、自作に就いて語った事が一度も無い。いやなのである。読者が、読んでわからなかったら、それまでの話だ。創作集に序文を附ける事さえ、いやである。  自作を説明するという事は、既に作者の敗北であると思っている。不愉快千万の事である。

「自作を語る」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 友人は、ありがたいものである。一巻の創作集の中から、作者の意図を、あやまたず摘出してくれる。山岸君も、亀井君も、お座なりを言うような軽薄な人物では無い。この二人に、わかってもらったら、もうそれでよい。  自作を語るなんてことは、老大家になってからする事だ。

「自作を語る」太宰治(青空文庫)

原文を読む

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